中国がミサイルの運搬、発射に転用できる特殊車両を北朝鮮に輸出していたことが明らかになった。国連安全保障理事会の決議に違反する可能性がある。中国には事実関係の説明を求めたい。
国連安保理は二度の決議で、北朝鮮に対し小火器を除く兵器と機材・技術の調達を禁じ、加盟国には輸出しないよう求めている。核とミサイル実験を重ねたための制裁決議だ。
ところが中国に疑惑が浮上した。昨年十月、海上保安庁が大阪港に入港した貨物船の立ち入り検査をしたところ、中国軍関連企業が特殊車両を北朝鮮に輸出した記録が見つかった。この船が以前、上海を出て北朝鮮南浦に入港したことも確認された。
北朝鮮は四月に軍事パレードを公開し、専門家から「新型ミサイルを積んだ大型車両は中国製ではないか」という指摘があったが、それを裏付ける資料といえよう。
中国外務省報道官は「不正な輸出は一切していない」と主張するが、中国は安保理の常任理事国であり、制裁決議を率先して守るべき立場にある。車両輸出の経緯を安保理に説明しなければ、ミサイル開発に手を貸しているという疑惑は晴れないままだ。もし「民生用なのに北朝鮮が転用した」と言うのなら、貿易管理体制の見直しが必要だろう。
安保理には制裁が履行されているかを調査する専門家の委員会があるが、中朝間では民生、軍事を問わず密貿易が行われ、それが制裁を「骨抜き」にしていると指摘する。だが、委員会の報告書は中国の反対で公表が遅れている。
ただ、周辺国との間では複雑な駆け引きが展開されたようだ。日本と米国、韓国は特殊車両輸出の情報を共有しながら、これまで中国を名指しする事実の発表を避けてきた。
北朝鮮が三度目の核実験を準備中だという情報が流れ、実験を止めるには中国の協力が必要であり、不正輸出だと追及するのは得策ではないという外交判断が働いたようだ。最近、北朝鮮外務省は「核実験は計画していない」と表明し始めた。
一方で、中国の経済支援がなければ北朝鮮は体制を維持できず、東アジア全体が不安定になる恐れもある。金正恩体制の後見人である中国には、支援物資が大量破壊兵器の開発に転用されないよう監視を強めるとともに、改革・開放への取り組みを誘導する役割も求められる。
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