HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 36524 Content-Type: text/html ETag: "178b852-22df-b041cc40" Cache-Control: max-age=5 Expires: Mon, 11 Jun 2012 22:21:58 GMT Date: Mon, 11 Jun 2012 22:21:53 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

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2012年6月12日(火)付

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 自宅ベランダのミニトマトが青い実をつけた。室内では熱帯生まれの観葉植物が開花の支度を始めている。草木だけが知る長雨の気配があるらしい。平年並みの頃合いで、東北南部までが梅雨入りした▼じめじめ、むしむしは嫌われるが、この国の自然や文化に欠かせぬひと月余りである。古来の文人墨客(ぶんじんぼっかく)らは、水満ちる季節を巧みな筆で描いてきた▼梅雨を詠んで名高い句に、芭蕉の〈五月雨(さみだれ)を集めて早し最上川(もがみがわ)〉がある。疾走する流れが、船上からの生中継よろしく活写される。同じ季題でも、蕪村の〈五月雨や大河を前に家二軒〉は静止画の趣。ニュース写真に通じる緊張感で、水害の危地を切り取っている▼天気図にも動と静があるなら、梅雨は滞るほうの代表だろう。春夏を分かつ休止符のように、南北の気団に挟まれて前線が横たわる。春雷や竜巻に慌てた日々を思えば、揺るがぬ曇天、予報通りの細雨(さいう)も悪くない▼昨年亡くなった詩人、岸田衿子(えりこ)さんに「いろんな おとの あめ」がある。〈はっぱにあたって ぴとん/まどにあたって ぱちん/かさにあたって ぱらん……〉と楽しい。雨粒を受けた側の質感を三音で聴き分けて妙だ。〈すみれのはなに しとん/くるまのやねに とてん〉▼鈍重な天気図の下、降り暮らす雨滴の群れは、それぞれの音をたてて地に消える。無粋を省みず、梅雨の肌ざわりを短詩風にすれば、「にほんれっとうが じゅるん」とでもなろうか。「にほんのせいじ」も、右に同じである。

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