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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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造物の妙のひとつに生き物の「擬態(ぎたい)」がある。周囲の環境に紛れるカムフラージュなどのことで、隠れ上手の昆虫ナナフシなど、木の葉や小枝と見分けがつかない。〈武器持たず逃げ足のろいナナフシは擬態のあげくポロリと身捨つる〉。かつて本紙歌壇に載った情景が、菊地直子容疑者(40)の逮捕にどこか重なる▼人目をかいくぐって17年。特別手配されていたオウム真理教元信徒の逃亡生活が、色々と分かってきた。「もう逃げなくてもいいと、ほっとしています」。世をあざむく自分に疲れて、ポロリと吐いた本音だろう▼偽名で介護員として働いていた。職場の「女子会」で飲み、自宅に知人を招くこともあったそうだ。だが、かりそめの日々にいくら紛れても、「逃亡者」という現実は動かない▼同居を始めた男から求婚されたが、本名を明かして断ったという。その代わりに婚礼服姿で記念撮影だけをして、指輪も贈られた。2人で出頭しようと話し合ったが、できなかった。しめっぽい演歌調はしかし、罪を薄める解毒剤ではない▼それにしても、ダイエット広告の「使用前」「使用後」のような手配写真と今の落差に驚く。痩せる太るは小細工不要の「変装」になる。意図した減量か、逃亡やつれかは、本人のみぞ知る、だろう▼最後の一人、高橋克也容疑者(54)も年貢の納め時が来たようだ。実在の人になりすます擬態で世に潜んできた。カルト教団の闇の一端を白日にさらす。せめてもの罪滅ぼしが逃亡者らを待つ。