HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 36271 Content-Type: text/html ETag: "df992f-22b0-19857900" Cache-Control: max-age=2 Expires: Tue, 05 Jun 2012 22:21:13 GMT Date: Tue, 05 Jun 2012 22:21:11 GMT Connection: close
朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
|
科学者アインシュタインにこんな逸話があるそうだ。妻のエルザが米国の最先端の実験室に招かれた。大きな新しい機械を見せられる。これで宇宙を探っていると説明されて妻が言うには、「夫は同じことを使い古しの封筒の裏でやってますよ」▼つまり、そのへんの紙切れで計算してます、と。『ゆかいな理科年表』(ちくま学芸文庫)に教わった。真偽はともかく大天才ゆえの逸話だろう。その奥さんが天国で、「だから言ったでしょ」と笑っているかもしれない▼去年、ニュートリノなる素粒子が光より速いと報告された。本当なら、光速を超す物質はないとしたアインシュタインの特殊相対性理論、すなわち現代物理学の土台を揺るがす。ひとしきり騒ぎになったが、先ごろ、結果は誤りだと分かった▼スイスの加速器からイタリアの検出器へ素粒子を飛ばす実験は、問題点を修正して再び行うと光速は超えなかったという。素人としては「博士はやっぱり偉かった」と感心するほかないが、光の「王位」が動かぬ天地の理(ことわり)に、どこかほっとする▼光は秒速30万キロ、1秒で地球を7周半、と誰もが習ってきた。太陽の光は8分17〜19秒で地球に届く。この距離で光をもらい、地球に生命が栄えてきた。この星をほどよく温める絶妙の配置は奇跡と言えるらしい▼今日は金星が太陽の前を横切る天体ショーがある。明るい金星が、黒い点となって太陽に重なる。天才の理論はお手上げだが、星々の運行に天界の深遠を想像してみる。