HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 05 Jun 2012 00:21:09 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:野田内閣再改造 消費増税と取引する愚  :社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

野田内閣再改造 消費増税と取引する愚  

 野田佳彦首相が再び内閣改造に踏み切った。問責二閣僚の交代は当然としても、再改造が消費税増税を進めるための環境整備というのは納得できない。

 消費税率を二段階で10%に引き上げるための「社会保障と税の一体改革」関連法案を、今の国会中(会期延長がなければ六月二十一日まで)に成立させる意気込みを示したかったのだろう。

 通常、官房長官が務める閣僚名簿の発表を首相自らが行い、内閣再改造の理由を「一体改革を含め諸懸案を前進させるための環境整備をすべく、内閣の機能強化という視点で改造した」と説明した。

◆人選の失敗を糊塗

 しかし、首相が一月の内閣改造時に豪語した「最善かつ最強の布陣」が正しければ、わずか五カ月後に再改造する必要もなかった。

 参院民主党の実力者である輿石東幹事長の意向に逆らえずに起きた人選の失敗を糊塗(こと)するために、内閣機能の強化を再改造理由に持ち出したのが実態だ。

 参院では四月二十日、田中直紀防衛相と前田武志国土交通相の問責決議が可決され、野党側は首相に二閣僚の更迭を求めていた。

 安全保障の基礎知識を欠く田中氏は国会答弁が安定せず、適格性に疑問符が付いた。

 市長選告示前に送った特定候補支援文書の違法性が指摘された前田氏は旧建設省出身。大型公共事業の建設再開に前向きで「コンクリートから人へ」の民主党の理念に逆行する人選でもあった。

 法的拘束力のない問責決議で政権を揺さぶる野党戦術は問題ありだが、不適格な人選の二閣僚は速やかに交代させるべきだった。

 問責決議後、参院では法案審議が滞り、今国会の法案成立率は二十数%と低調だ。その責任は審議を拒否した野党側ばかりでなく、二閣僚を交代させられなかった首相も負うべきはもちろんである。

◆議員の身まず削れ

 さらに今回の内閣再改造には、首相が「政治生命を懸ける」と断言した一体改革法案の今国会成立に向けて、自民党など野党側との法案修正協議に入る環境整備という側面があることを見逃せない。

 財政状況に対する危機感はわれわれも首相と共有する。少子高齢化社会の進展で、現行の社会保障制度が持続可能だとは思わない。

 しかし、再三指摘してきたように、衆院で審議中の法案は現行の社会保障制度の維持を基本としており、一体改革の名に値しない。

 政府や国会の無駄削減や社会保障制度の抜本改革を後回しにし、消費税増税の前例づくりの法案をいくら修正したところで、国民の理解が得られる改革に仕上げるのは難しいのではないか。

 内閣再改造を機に、与野党が本格的に協議を始めるというのなら、まずは政党交付金や歳費、文書通信交通滞在費の削減など国会議員が身を削る姿勢を示すことから始めてほしい。

 さらに、「官」の抵抗で遅々として進まない行政改革にこそ与野党が力を合わせ、同時に、政権が代わっても大きく変える必要がないよう安定的な社会保障制度づくりに知恵を絞るべきである。

 もし消費税率を上げる以外に財源を見つけることが難しいというのなら、増税前にやるべきことをやり尽くした上で、国民に理解を求めるのが筋だ。

 国会は各党の主張がせめぎ合う場だ。特に「ねじれ国会」では、与党の思い通りにならないことも多いだろう。かといって民主党らしさを失っては意味がない。

 初の民間人防衛相となった森本敏拓殖大大学院教授は、民主党らしさとは程遠い人選ではないか。

 田中氏の不安定な国会答弁が続き、自衛官出身で安全保障の論客にすがりたかったのだろう。

 ただ、自公連立政権時代の二〇〇九年に防衛相補佐官に起用されたり、集団的自衛権の行使容認や憲法改正を主張する森本氏は、民主党よりも自民党の立場に近いのではないか。

 今回新任された五閣僚のうち、森本氏を除く四人は当選回数などを勘案した順送りの色彩が濃い。

 その分、森本氏起用に首相の狙いが表れていると言えるが、消費税増税への協力を得るために自民党に擦り寄るのなら、民主党内からも異論が出るのは当然だ。

◆自民と同化の疑念

 国民が民主党に政権を託したのは、〇九年衆院選マニフェストに自民党とは違う政権像を見たからだ。それを墨守する必要はないとしても、政治主導や地域主権、生活第一などの理念をも反故(ほご)にするのなら民主党に存在意義はない。

 内閣再改造を機に自民党との連携に大きく踏み出したかに見える首相には、民主党らしさを失い、自民党と同化しつつあるとの疑念が向けられていることを、重く受け止めるべきである。

 

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