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野田首相がきのう、2度目の内閣改造に踏み切った。参院で問責決議を受けた2閣僚や、これから野党の追及を受けそうな閣僚を差し替えた。自民党などの更迭要求に応じることで、社会[記事全文]
経済力とともに軍事力を伸ばす中国が、海洋権益で強い姿勢に出ている。力を振りかざすのはやめ、冷静に対話する環境づくりに努めるべきだ。南シナ海・スカボロー礁(中国名・黄岩島[記事全文]
野田首相がきのう、2度目の内閣改造に踏み切った。
参院で問責決議を受けた2閣僚や、これから野党の追及を受けそうな閣僚を差し替えた。自民党などの更迭要求に応じることで、社会保障と税の一体改革関連法案の成立に向け、環境を整えようというのである。
野田首相の記者会見からは、一体改革にかける決意は伝わってきた。
いわく、6月21日の国会会期末までは、日本の将来を左右する決断の時だ。「21日」を見据えて、それまでに衆院で採決をめざす――。
期限を切り、文字どおり政治生命をかけて臨むということなのだろう。
ただし、この改造は、法案の修正協議を進めるにあたって、のどにささった「とげ」を抜いたにすぎない。民主党が患う「病」が治ったわけではない。
自民党の谷垣禎一総裁は、病の正体を、こうたとえている。
「民主党には頭がいくつあるのか。それぞれの頭が好きな方向に動き、政治生命をかけるという総理の意思が、党運営に通ってきていない」
たとえば輿石東幹事長は、2閣僚の更迭に反対してきた。自民党欠席のまま政府提出法案の審議を急ぎ、反発を誘うような国会運営もしている。
このため、氏の真意は一体改革の先送りにあるのではないかと疑われている。
小沢一郎元代表は、採決の際に反対する姿勢を明確にしている。党の方針に対する造反である。なのに輿石氏は、首相や小沢氏との会談後、「3人の中で、党を割ったり決裂したりしていいとは毛頭思ってはいないことを確認できた」と語った。
それでは、採決を先送りするほかなくなるではないか。
改造にあわせて党役員人事に踏み切る選択肢もあったのに、首相は避けた。ならば首相の意向に沿って動くよう、党のたがを締め直さなければなるまい。
まず修正協議の場づくりだ。
全党で協議するといっても、最初から立場が違う党と折り合うのは難しい。この局面では、首相が会見で語ったように、野党第1党の自民との協議を優先するしかあるまい。
修正協議の担当者の顔ぶれも重要だ。首相の意を体し、自民党との合意づくりに真剣にのぞむ人材を選ぶべきだ。
首相は、党役員に「毎日的確な情報を上げるように。必要な判断は私がする」と指示したという。その言葉通り、首相は退路を断って、みずから陣頭指揮をとるほかない。
経済力とともに軍事力を伸ばす中国が、海洋権益で強い姿勢に出ている。力を振りかざすのはやめ、冷静に対話する環境づくりに努めるべきだ。
南シナ海・スカボロー礁(中国名・黄岩島)で、領有権をめぐり、フィリピンとの緊張が続いている。中国では、軍事力行使を求める主張が、軍関係者や当局と結びついたメディアから出ている。
軍拡路線をひた走り、空母の正式配備が近づく中国と、ミサイル搭載の艦船も持たないフィリピンの軍事力の差は歴然としている。だがフィリピンには米国と結ぶ相互防衛条約がある。このままでは米国も巻き込んだ緊張が高まりかねない。
フィリピンのルソン島から西約230キロにあるこの海域は、各国の漁民が入り乱れる漁場だった。4月にフィリピン海軍の軍艦が中国漁船を取り締まろうとして、対立に火がついた。以来2カ月、両国の監視船がにらみあっている。
中国の強硬姿勢の裏にあるのは、大国意識の強まりだ。
「小国は意のままに大国を侵害したり、挑発したりしてはならない」
シンガポールの有力中国語紙「聯合早報」に先日、中国の傅瑩(フー・イン)外務次官の投稿が載った。名指しはしていないが、フィリピンを念頭に置いていることは明らかだ。
「大国は小国を軽視しない」という下りもあったが、これでは周辺の国々が不安を抱くのは無理もない。
大国ならば大国らしく、中国は自制を利かせてはどうか。
中国の台頭で地域の秩序が揺らぎを見せるとき、安定の要素として、これまで以上に重みをますのが、米軍の存在だ。
シンガポールで開かれた国際会議でパネッタ米国防長官は、アジア太平洋に米軍を重点的に配置する方針を示した。太平洋と大西洋に半々で置いていた海軍の兵力を、2020年までに6対4の割合に変える。
大幅な国防費削減を迫られ、アフガニスタンやイラクから兵力を撤退しつつ、貿易量が多くて米国の繁栄に直結するアジアを重視する。
米政府は「南シナ海の航行の自由は米国の国益」との立場をとる。ただ、「対中包囲網」の色合いが強まりすぎれば、中国の過度な警戒を呼び起こし、かえって緊張を招きかねない。
米中両国は、あらゆる機会をとらえて互いの理解を図り、周辺の国が安心できる秩序を作ることが求められる。それが各国の繁栄につながる。