就職難、早期の離職、フリーターになるとなかなか抜け出せない現実。絶望的ともいえる若者の雇用環境をどう改善するか。政府がまとめた戦略は対症療法ばかりで、若者は希望を見いだせるのか。
内閣府が二〇一〇年三月の卒業生を対象にした推計では「就職できなかったり、就職できても三年以内に仕事を辞める人」が高卒は三人に二人、大卒では二人に一人に上った。すぐに辞めてしまうのは希望しない仕事に就かざるを得なかったからだろう。胸が痛む数字である。
就職氷河期の根本的な原因は、急増した大学生に対し、企業の採用数がそれほど増えていないからだ。一九九〇年ごろのバブル期の大卒者は約四十万人だったが、今や五十五万人もいる。景気の長期停滞もある。
しかも多くの学生が、周囲の期待もあって、「現実」以上の有名企業ばかりを追い求めている。一方で採用意欲の強い中堅・中小企業には人材が集まらないミスマッチが続いている。
だから、まず必要なのは、学生の大企業偏重を改めさせ、中小企業に目を向けさせることだ。今回の戦略は、中小企業の仕事内容や採用情報を政府がホームページで紹介する事業や、企業に採用実績校の公表を求めることを盛り込んだ。ここまでは評価できる。
しかし、残念なのは、厚生労働、文部科学、経済産業省それぞれが予算の増額や復活をもくろむ省益優先の姿勢を見せたことだ。例えば、ミスマッチ対策としてハローワークの相談員を全国の大学に派遣するが、大学の就職担当者から異論が出たように、厚労省がハローワーク事業の拡大を意図したものだろう。
早期の離職防止対策で高校や大学で行うキャリア教育も、事業仕分けで廃止された文科省の事業を復活させる内容だ。若者支援に名を借りた焼け太りではないか。
もっと真摯(しんし)に現状を見つめてほしい。若年雇用崩壊の背景には、第三次産業へのシフトが進んだことで、若者にとっては苦手な「対人折衝」を必要とする職場が増えたことや、高卒の雇用を吸収してきた製造業現場や農業、建設業がグローバル化で縮小したことがある。
目先の失業率改善といった戦略では、働きがいのある社会は見えてこない。経済構造が変化する中で多様な働き方や、グローバルな人材育成といった若者の将来を考えた対策をつくってほしい。
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