HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 01 Jun 2012 20:21:14 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:がん対策 「生きたい」支えるには:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

がん対策 「生きたい」支えるには

 二〇一二年度からの第二次がん対策推進基本計画案がまとまった。今後五年間の国のがん対策戦略であり、六月に閣議決定を目指す。病と闘う患者・家族を支えるために確実に実行すべきだ。

 十九歳で亡くなった女の子を、小児科医の細谷亮太さんが自著「生きようよ 死んじゃいけない人だから」で紹介している。

 脚にがんができ肺に転移し最期を迎えたとき、女の子は海外に単身赴任中で帰国便を待っていた父親にお別れの電話をする。

 女の子の名を叫ぶ父親に彼女は優しく語りかける。「また生まれ変われたら、おとうさんの子になってあげるからね」と感謝した。細谷医師は、死を受け入れ両親を慰める女の子に感動しつつ、子を失う親の悲しみにも寄り添う。

 日本人の二人に一人はがんになる時代である。患者と家族、医療関係者は日々がんと闘っている。

 国や自治体、医療機関がスクラムを組み取り組むがん対策の骨格となるのが基本計画だ。

 〇七年に施行されたがん対策基本法で国に計画策定が義務づけられた。これを基に都道府県も計画をつくりがん対策を担う。

 〇七年度から五年間の第一次計画では、全国どこでも治療を受けられるように拠点病院の整備を進めた。がん検診の受診率向上や痛みを和らげる緩和ケアの充実、相談窓口の設置なども図った。

 第二次計画の五年間では、重点課題として小児がんと働く世代への対策の充実が加わった。

 小児がん対策は子どもたちの治療を専門に担う拠点病院を整備する。働く世代のがんの早期発見に検診の受診率向上や、成人の喫煙率減に数値目標も掲げた。

 ただ疑問もある。社会を支える働く世代や将来世代の子どもたちへの対策は重要だが、そうした狙いが計画から明確に見えない。

 小児がんの発症者は全国で年間約二千五百人だ。手厚い対策を求める他のがん患者・家族もいる。どういう優先順位で対策を進めるのか分かりにくい。

 第一次計画では拠点病院など設備面の整備は進んだ。だが、生きる希望を持ち充実した生活を送れる患者が増えたのかといった対策の成果は分からない。それを把握する指標がないからだ。

 対策の評価があってこそ課題や優先順位が分かり、次に生かせる。指標づくりは今後進められるが、実効性のある計画に育て患者の「生きたい」に応えてほしい。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo