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朝日新聞社説をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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いったい、いつまでサボタージュを続けるつもりなのか。会期末が6月21日に迫るというのに、国会ではほとんどの法案審議がストップしたままだ。田中防衛相[記事全文]
何ともすっきりしない。関西電力大飯原発の再稼働について、関西広域連合が5月30日に示した結論である。会合後、9人の首長は連名で「限定的なものとして[記事全文]
いったい、いつまでサボタージュを続けるつもりなのか。
会期末が6月21日に迫るというのに、国会ではほとんどの法案審議がストップしたままだ。
田中防衛相と前田国交相の問責決議案を4月18日に提出して以来、自民党は社会保障と税の一体改革などを除いて、審議を拒み続けている。
野田首相は、自民党欠席で開かれたきのうの衆院本会議で、2閣僚の交代を求められ、「反省すべきは反省し、職務遂行に全力を挙げるべきだ」と改めて拒否した。
だが、もう時間はない。首相は2閣僚更迭に踏み切る。野党は審議に戻る。一体改革をめぐって、民主党が野党側に修正協議を呼びかけているこの機を逃さず、正常化を急ぐべきだ。
なにしろ、国会の停滞ぶりは目を覆うばかりだ。
参院は開店休業状態で、もう1カ月以上も本会議が開かれていない。
衆院も似たようなものだ。関越道のバス事故が起きても、国交委員会は閣僚抜きで参考人質疑をしただけ。日米でまとめた米軍再編見直しの中間報告は、安保委でも外務委でも議論されていない。
多くの重要法案もほったらかしだ。夫が勤めを辞めた際、必要な届けをしなかった専業主婦が、本来より多く年金を受け取る問題の解決は、受給者の暮らしや制度の公平性に直結する。
国際結婚が破綻(はたん)した際の子の扱いを定めるハーグ条約関連法案は、これに強い関心を示す米国との関係にも影響を及ぼす。
政府提出法案の成立はまだ2割強。このままでは「サボタージュ国会」として汚名を残す。
あくまで2閣僚を守ろうとする野田政権も、クビをとれないからと審議を拒む自民党もおかしい。「閣僚のクビより、国民の暮らしにかかわる法案の成否のほうが、はるかに大切だ」という事実を忘れているといわざるをえない。
それにしても、政権の対応はちぐはぐすぎる。
首相が野党との修正協議を始め、歩み寄るよう指示しているのに、輿石執行部はいたずらに野党を刺激し、亀裂を深めるような振る舞いばかりしている。
きのうは、自民党欠席のまま国家公務員の労働基本権の一部を回復する法案などの審議に入った。そんな国会運営で、展望が開けるのか。権利回復を求める連合の顔を立てただけではないのか。
首相の意向通りに民主党が動かないようでは、与野党の歩み寄りなど望むべくもない。
何ともすっきりしない。
関西電力大飯原発の再稼働について、関西広域連合が5月30日に示した結論である。
会合後、9人の首長は連名で「限定的なものとして適切な判断をされるよう求める」との声明を出した。政府は容認と受け止め、再稼働を事実上決めた。
関西の首長の発言には温度差がある。橋下徹大阪市長は「事実上、容認です」と認めるが、京都府の山田啓二知事は会合直後、「容認ではない。これからも主張する」と言った。
大飯原発の安全性をめぐって強い疑念を示してきた広域連合が、どういう議論を経て声明をまとめたのか――。
電力不足が経済活動や住民の暮らしに与える影響を考え、最終的に再稼働やむなしに傾いたのなら、そう語るべきだ。
声明文は非公開の場で作成された。オープンな会議の場では正論を述べ、裏で政府にサインを送るような文案を練っていたと思われても仕方ない。住民にきちんと説明することは、首長としての責務だ。
このまま再稼働すれば運転期間をめぐる混乱もあり得る。
「期間限定」という橋下市長の発言に沿うなら、電力需要のピークを過ぎた秋には停止しないとおかしい。だが政府は「時限的運転」を否定している。
あいまいな歩み寄りは、なし崩し的な稼働継続につながりかねない。
半面、広域連合がこの数カ月間、安全最優先の主張を突きつけてきたことは、関電の需給予測の精査や原発の監視態勢の強化につながった面もある。
関西の各自治体は再稼働がないことを前提に節電策の議論を積み重ね、関電も電力使用のピークをずらす新料金メニューや節電取引市場を導入する。
気を緩めず節電に努めよう。滋賀県は1日、節電目標を引き続き15%とすることを決めた。結果的に再稼働は不要だったという実績を作れば、広域連合の影響力は増すだろう。
原発のリスクと直接向き合うのは住民であり、自治体だ。
再稼働問題で国に最高水準の安全対策や防災体制の整備を求めてきた広域連合は、主張の重みと責任を自覚し、脱原発に向けて何をなすべきか、今後も提言を続けるべきだ。
関電に脱原発を迫る大阪や、脱原発依存への工程表などを政府に求めた京都と滋賀が先導して、脱原発を広域連合の中核テーマに位置づけてはどうか。
再稼働を事実上容認して終わりにするなら、無責任のそしりを免れない。