HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 36022 Content-Type: text/html ETag: "1545e5d-22aa-641197c0" Cache-Control: max-age=2 Expires: Fri, 01 Jun 2012 00:21:12 GMT Date: Fri, 01 Jun 2012 00:21:10 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

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2012年6月1日(金)付

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 「これは日本人だけが作れる映画だ。日本人だけが作る権利を持ち、より以上に作る義務を持っている」と、60年前の小欄が書いている。新藤兼人監督の「原爆の子」を見て、当時の筆者は「すぐにはペンを執れぬほどの強い感動を受けた」と記した▼占領下の日本で、原爆をめぐる記述や映像は厳しく検閲された。封じられ、忘れられたようだった原爆の悲惨を、この映画は真っ向から描いて突きつけた。「作りたい映画をつくる」を貫いてきた新藤さんの代表作である▼その訃報(ふほう)を聞いて、硬骨にして濃密な人生の軌跡を思う。反戦平和への信念は、兵役の体験が根底にある。「ゴミみたいな中年兵の一人」だった。殴られ、しごかれ、「もう敵がアメリカなのか帝国海軍なのかわからなかった」。召集仲間100人のうち、実に94人が戦死していった▼終生のパートナーになる乙羽信子さんには、亡妻をしのんだ監督デビュー作「愛妻物語」の妻役として出会う。すでに新たな家庭があった。それぞれの葛藤は想像に余るが、長い時ののちに結婚に落ち着いた▼乙羽さんの自伝にある言葉がいい。「(好かない男の砂糖より)好いた男の塩のほうが甘い」。がんで余命わずかな乙羽さんが、夫のメガホンで燃焼しきった「午後の遺言状」は名作の誉れが高い▼「新藤組はシンドイ組」と言われた撮影への執念。それを携えての旅立ちだろう。4月の小欄で満100歳をお祝いしたばかりだった。天界では新たなロケが始まるころか。

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