政府が国会に提出した災害対策基本法の改正案は、3・11を教訓に広域支援態勢がとれるよう国と都道府県の役割を強めた。必要な改正を急ぎつつ、減災から復興まで総合的な法整備も不可欠だ。
東日本大震災では多くの市町村が被災し庁舎や職員を失ったため、被害の把握や救援活動など初動態勢が十分に取れなかった。改正案では、市町村が被害を把握できない場合は都道府県が情報収集する▽国や都道府県は市町村からの要請を待たずに救援物資を供給できる▽自治体を超えた広域避難を国や都道府県は調整する−ことを盛り込んだ。
当たり前の対応だが、現行法には市町村が壊滅的被害を受ける想定はない。災害対策はどうしても後追いになってしまう。基本法も一九五九年の伊勢湾台風を機に制定。国が防災基本計画、自治体が地域防災計画を作成する根拠法となった。阪神大震災後、自衛隊派遣要請の権限を市町村長に拡大するなど大幅改正されている。
大災害ごとの“つぎはぎ改正”は仕方ないとしても、もっと踏み込める点はあるのではないか。東北の被災地で今も続く自治体間の応援について、あらかじめ協定締結に努めることが明文化されたが、いっそ制度化すべきだ。
3・11以降、自治体の相互応援協定が増えている。沿岸部と内陸部、都市と農村の組み合わせを考えたい。広域災害での応援は遠隔地の方が機能しやすい。一対一で支援相手を決めておくカウンターパート方式も有効だ。
地域住民をはじめボランティア、民間企業を交えた支援態勢が威力を発揮することも学んだ。「自助」「共助」が重要だ。「公助」中心の現行法を抜本的に見直したい。まずは、避難の在り方など積み残した課題を含めた第二次の改正を急がなければならない。
今改正案では、住民の責務として災害教訓の伝承を明記し、自治体には防災教育の実施を努力目標とした。地域防災力を向上させる上で極めて重要だ。各自治体の計画に具体策を盛り込んでほしい。
次に来るだろう南海トラフ巨大地震の対策では、東海と東南海・南海に分かれる特別措置法を早く一本化すべきだ。甚大な被害や影響が想定される首都直下地震は、国家の命運がかかるだけに特措法が必要だ。
被害を最小限に食い止め、早く復旧復興する−。そのためにも災害法制を再整備し、世界が見習う防災モデル国を目指したい。
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