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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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漢字の多くは、一字の成り立ちに濃密な事柄を秘める。たとえば「民」の字は、目を突き刺している形だという。漢字学者の故・白川静さんによれば、視力を失った人を民と言い、神への奉仕者とされた。それがいつしか「たみ、ひと」の意味で使われるようになったそうだ▼意味の変化には「知らしむべからず」の臭いがする。おとなしく権力に従わせる対象を「民」と呼んだのではないか――。そんなことを、「原子力ムラ」の伏魔殿ぶりから連想した。民に目隠しをし、民を侮る、思い上がった人たちである▼ムラで重きをなす原子力委員会は国の原子力政策の基本を決める。そこで内々の「勉強会」を重ね、電力業界とのなれ合いの末、推進派に有利なように報告書案が書き換えられていたという▼この期に及んでの無反省に驚くほかない。そういえば専門委員の中には、原発関連企業などから寄付を受けていた人もいる。この組織、壊して更地にして作り直す必要がある。古い革袋に新しい酒は入れられない▼事故のあとも、必要かつ正しい情報が様々に遮断されているようだ。脱原発を訴えれば、「情緒的」「感傷」といった蔑(さげす)みが産・官・学から返ってくる。夏場の電力が足りないと迫られる。これでは今日より良い明日は見えてこない▼原発を知らなかったこと、知ろうとしなかったことを、多くの人が誠実に悔いている。欺き隠して知らせなかった罪を、ムラは心底自省するべきなのだ。欺瞞(ぎまん)の上塗りはごめんである。