一人一人のお客さんが買ってくれる量は多くはない。だからまとめ買いしてくれる会社を優遇したい。そんな企業心理は分からなくもないが、物事には限度があるだろう▼電力会社がひた隠しにしていた収益構造のカラクリが、経済産業省の審議会で白日の下にさらされた。東京電力は、販売電力量の六割が企業向けだったにもかかわらず、利益の九割は家庭向けに販売した電力で稼いでいた。東電ほど極端でなくても他の電力会社も傾向は同じだ▼企業向けの電気料金はすでに自由化され、小売りの新規参入者との競争で市場原理が働く。家庭向けは発電費用に利益を乗せる「総括原価方式」に守られ、地域独占企業の電力会社は身を削る必要もなかった▼一般家庭がここまで割高な料金を押し付けられているとのデータは、これまで公表されたことはない。彼らが隠したかった理由がよく分かる▼東電は、家庭向け料金の平均約10%の値上げを申請している。あからさまな企業優遇の実態を知って、すんなりと値上げを受け入れる気になる一般家庭はどれほどあるだろうか▼原発の再稼働を強く要請しているのは、主に経済団体をはじめとする大企業側だ。実際に、電力会社の経営を支えてきたのは小口の一般家庭であり、企業側はその恩恵をこうむっていた。電力会社と大企業を結んでいた虚飾がまた一つ、はがされた。