自転車を利用しやすい交通環境の整備に向け、政府の有識者会議が提言をまとめた。「車道走行」をあらためて強調、安全に走行できる道路の整備を具体的に提案している。着実に進めてほしい。
飲酒運転は自転車でも禁止である。車道の左側を走り、歩道走行は例外、信号無視も許されない。なぜなら自転車も車両だからだ。
自転車が関わる事故増加を受け警察庁は昨年十月、本来ルールである自転車の車道走行の徹底を決めた。安全対策を名目に四十年近く歩道走行を認めてきた方針を大きく転換した。
提言案「みんなにやさしい自転車環境」は、国土交通省と警察庁が設置した有識者会議が四月にまとめた。
「車道を走る」原則を確認し、どんな道路整備や環境づくりが必要か有識者が提案している。これを基に整備を担う自治体など向けにガイドラインをつくる。
提言では、全国で整備が進められてきた、自転車が走行できる歩道「自転車歩行者道」を原則整備しないことを打ち出した。この整備が続けば「車道を走る」との理解が広がらない。妥当な提案だ。
歩道は歩行者に返し、道路左側に整備する自転車道や専用レーンを走る空間とする。一目で走る場所が分かる道の構造も提案する。
地域の道路事情に柔軟に対応しながら、自転車の走る空間を確保するためには車線を減らしたり、一方通行に規制するなど自動車優先の考え方の転換も求めている。歩行者、自転車、自動車が道路を共有する意識は必要だ。
提言は車道を安全に走るための現実的な提案といえる。
ただ「車道は怖い」「歩道が安全」との利用者の誤解は根強い。米国のデータでは、歩道を走行して自動車と事故に遭う確率は車道走行時の六・七倍高くなる。交差点などで車道を走る自転車は車から見えやすいが、歩道走行だと視認しにくいからだ。
自転車が走りやすい環境を全国で整備するには、その責務を現場で担う自治体や警察の担当者がまず車道走行の必要性や安全性を理解する必要がある。
自転車道をブツ切れに整備したり、途中で歩道に誘導するようでは安全上も問題である。警察官が自転車で歩道を走るようでは、車道走行がなかなか浸透しない。
自転車利用者にも理解を広げるには国も、自転車の走る空間が整備された車道の走行が安全で快適だと粘り強く説明すべきだ。
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