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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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政治家はたとえ話がうまい。田中角栄元首相がこんな人物評を語ったそうだ。「大平は一刀流、福田は長ドス、三木はくさりがま、宮沢は小太刀」。(稲垣吉彦著『ことばの四季報』から)。いずれも自民党の大物だが、往年の政界図を彷彿(ほうふつ)とさせて面白い▼時は移って、すっかり「決められない首相」の印象に染まる野田さんである。失礼ながら、思い浮かぶのは「鉛刀(えんとう)」だ。つまり「なまくら刀」。といっても悪い意味ばかりではない。「鉛刀は一割(いっかつ)を貴(たっと)ぶ」と中国の詩句に言うそうだ▼鉛の刀は一撃すれば折れ曲がってしまう。だから一度きりの機をねらい、邪念も色気も捨てて無念無想、全力を絞れと説く。二度目はない。税と社会保障の改革で「不退転」を繰り返す首相に、さて、その気概はあるのだろうか▼答弁はよどみないが、紋切り型だ。身内の融和が何より大事な輿石幹事長をどうにもできない。そうこうするうちに、小沢元代表が勿体(もったい)顔でまた登場である。堂々巡りにうんざりとなる▼今や常套句(じょうとうく)の首相の決意を、〈幾つあるのか政治生命〉と川柳欄が一刺ししていた。自民党に秋波を送り、元代表にも流し目を使う。駆け引きをすべて否定はしないが、「保険」を捨ててこそ浮かぶ瀬もある、だろう▼中曽根内閣時代の後藤田官房長官はかつてカミソリや懐刀(ふところがたな)にたとえられた。今の藤村官房長官は「こんなに物を決めなくていいんでしょうか」と自民のベテランにこぼしたそうだ。内閣の要(かなめ)に焼きが回っては困る。