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朝日新聞社説をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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民主党の小沢一郎元代表が、野田首相との会談に来週にも応じる――。そんなニュースが、朝日新聞をはじめ各メディアをにぎわせている。会談には、仲介した輿石東幹事長も同席する予[記事全文]
学生の雇用環境は厳しいが、ブランドにとらわれず、働く人を大切にするところを選ぼう。今春卒業した大学生の就職率は93.6%で、過去最低だった前年を2.6ポイント上回った。[記事全文]
民主党の小沢一郎元代表が、野田首相との会談に来週にも応じる――。そんなニュースが、朝日新聞をはじめ各メディアをにぎわせている。
会談には、仲介した輿石東幹事長も同席する予定という。
首相はきのうの国会で「(消費増税が)党の方針として固まっていることは理解いただき、どうしても成立させなければならないとご説明したい」と意気込みを語った。
首相の熱意もわからないではない。法案成立に「政治生命をかける」という首相と、それに「反対」だという小沢氏が話しあう意義も認める。
だが、なぜ、会談のために、いちいち和平交渉の特使よろしく、幹事長の仲介を経なければならないのか。
いったい、この仰々しさは何なのだ。こんな田舎芝居じみたやり方が、国民の政治へのうんざり感をいっそう強めていることに、国会議員たちは気づくべきだ。
小沢氏は、いまはひとりの民主党員である。党代表を務めたこともあり、政治経験の豊富な政治家だが、みずから常々「一兵卒の身」と語ってきた。
そうであるなら、党の代表でもある野田首相とは、例えていえば「民主党」という同じ町内に住むお隣さんのような間柄ではないか。
実際、小沢氏の個人事務所から首相官邸までは、歩いて5分もかからない。
重要なテーマであればなおさら、「来週にも」などという必要はない。いつでも、どこででも、何度でも会うべきだ。
それに会談前から「決裂なら党分裂か」「輿石氏のメンツはつぶせない」といった観測が乱れ飛ぶ「永田町文化」も、国民と政治との距離を広げていく。
小沢氏はみずからのグループの議員たちとは昼夜を問わず会合を重ねている。しかし、首相と直接会うのは野田政権の発足以来、9カ月近くで初めてだという。
なかなか会わない。それによって会談自体の希少価値を最大限、高めようとする。それが小沢流なのだろう。
何とも時代がかった政治手法である。即断即決で動く市場経済のようなスピードまでは求めないが、もう少しさらりと行動できないものか。
欧米のメディアでは、一党員が党首に「来週にも会う」という記事は、まず目にしない。それを報じている日本のメディアの一員として、みずからの記事の奇妙さを自省しつつ考える。
2人はさっさと会えばいい。
学生の雇用環境は厳しいが、ブランドにとらわれず、働く人を大切にするところを選ぼう。
今春卒業した大学生の就職率は93.6%で、過去最低だった前年を2.6ポイント上回った。改善したのは4年ぶりだ。
小さな会社の求人情報にも強いハローワークが、大学とともに学生を支援した効果が出たという。
バブル期の1990年ごろに約40万人だった大卒者は、今や55万人に増えた。受け皿だった大企業は採用を減らした。
大手の就職支援サイトは登録も大手に偏りがちだ。その情報に頼って有名企業を追い、時間ばかりすぎてゆく――。
一方で、求人意欲の強い中小・中堅企業はある。大手志向の強い学生とのミスマッチが解消に向かうのは、いいことだ。
ただ、幅広い選択肢を視野に就職活動するとき、学生が抱く不安に目を向けたい。
学生たちは、それを「ブラック企業」と呼んでいる。
企業の大小によらず、採用した人材を長期雇用を前提に育てずに、使い捨てるというイメージが共通する。
多めに採用、入社後に激しく競争させ、「要らない」と判断したら退職に追い込む。残業代もろくに払わず長時間労働させる。パワハラやセクハラが横行する――。そんな評判の会社の名が若者の間で行き来する。
違法な働かせ方は、許されない。労働基準監督署が是正するのは当然だ。
ただ、働くのは楽しいことばかりではない。最初は厳しく指導されることも多く、慣れるまではつらいのが普通である。
何がブラックで、どれが育成なのか。若い人が見わけるのは簡単ではなさそうだ。
まずは「ブラックでない」ことを示す情報を、もっと行き渡らせることはできないか。
例えば入社数年以内の離職率だ。低ければ安定雇用の指標になる。高くても「起業志向が強い社員が多い」などの理由が説明されれば不利にはなるまい。
仕事と家庭の両立しやすさを示す情報も、有益だ。
福井県では地元の中小企業について社員の子どもの数などを調べ、在職中にどれだけの子どもを持てるかを推測する「企業子宝率」を調べて、「モデル企業」を認定している。
大企業や有名企業であるかどうかや、仕事の「かっこよさ」ではない。「どう働き、どう生きるのか」という中身に目を向けよう。学生だけでなく、親をふくめた大人も、思いこみから抜け出る必要がある。