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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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「太陽と月とどちらが大切でしょう」と聞く先生に生徒が答えていわく。「月です。月は闇夜を照らしてくれますが、太陽はもともと明るいところを照らすだけです」。『世界のジョーク事典』に見つけた笑話だが、この生徒も昨日の天体ショーを見たら感動したことだろう▼列島各地で金環日食が観察された。皆既日食のように「天の消灯」ではなく、輪となって神々しく光った。拙宅では、観葉植物の木漏れ日が、床(ゆか)にいくつもリングの影を落として幻想的に揺れていた▼古代の人たちは日食を様々に説明しようとした。天の怪物が太陽を食べているとか、太陽の神と月の神が争っているとか、色々ある。いまや奇怪な現象ではないが、それでも深遠な思いにとらわれる▼太陽の直径は月より400倍大きい。だが400倍の彼方(かなた)にある。この偶然が双方の大きさをほぼ同じに見せて、皆既や金環日食が起きる。見えた人は、太陽と月と自分が一直線になったのを実感したことだろう▼天気に泣かされた人は残念だが、雲が湧き、雨が降る大気の層がなければ人も動物も生きていけない。先日97歳で亡くなった詩人杉山平一さんが書いている。〈地球を包む空気の皮のなかに/生きているのに/林檎(りんご)の皮をむいて捨てている〉▼これが全文の詩は色々に読める。自然への慎みを欠く時代への警鐘にもとれるだろう。太陽と月を大切にするのは人知を超えるけれど、地球は人間しだい。もっと顧みたい。感動の余韻を、足元にも向けて。