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朝日新聞社説をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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今年1〜3月期の実質成長率が年率4.1%となった。政府は景気が回復しつつあると、判断を引き上げた。企業業績も、来年3月期は本格回復が見込まれる。国内は復興需要、海外では[記事全文]
台湾の馬英九(マー・インチウ)総統(61)が2期目に入った。1期目は中国との経済協力を進め、関係を大きく改善させた。次は、政治的な関係が最大の焦点だ。総統は3選できない[記事全文]
今年1〜3月期の実質成長率が年率4.1%となった。政府は景気が回復しつつあると、判断を引き上げた。企業業績も、来年3月期は本格回復が見込まれる。
国内は復興需要、海外では新興国の堅調な景気という追い風を受けている。
しかし、風頼みの危うさは経営者も承知しているだろう。欧州情勢など懸念材料は挙げれば切りがない。当面の景気復調をテコに、経済の大きな変化をビジネスに生かす事業構造の改革を進めてほしい。
電機業界では、トップ交代と軌を一にした新たな動きが目を引く。ソニーとパナソニックが次世代薄型テレビでの提携交渉に入り、シャープは台湾の鴻海グループを筆頭株主に迎える資本増強に踏み切った。
惰性を断ち切り、グローバル競争に勝ち残れるよう、経営を見直すことは日本の主要企業に共通する課題だ。
同時に、「デフレ先進国」としての消費潮流の変化も見過ごせない。例えば、テレビ販売の不振である。かつては家電の王様、昨今は家庭IT化の核として業界が期待したが、地デジ需要の一巡後は苦戦が続く。
根底には、モノへの欲求の希薄化がありそうだ。エコカー補助金に依存する自動車市場も似た構図である。
世の中とのつながりを重視する生活スタイルが、とくに震災後は広がっている。フェイスブックに代表されるソーシャルネットワークの隆盛は、その表れとみることもできる。
地域や家族をバラバラの個人に分解し、消費に駆り立ててきた戦後経済の大転換かも知れない。こうした変化を新たなビジネスとして形にする想像力と実行力が企業に求められる。
少子高齢化に対応した商品やサービスの開発などにも、この傾向を生かしたい。電力を消費者が主体的に選択できるよう、多様化したシステムに改め、新しい産業と市場を創造することも大きなテーマである。
むろん規制改革などで政府の役割も大事だ。ただ、財政政策も金融政策も限界にある。
日本企業が抱え込んでいる現金や預金は200兆円を超す。これを労働者に還元せず、投資にも打って出ないとなれば、宝の持ち腐れである。
企業がリスクにおびえ、縮こまったままでは、デフレ脱却は望めない。今こそ企業が前に出て、エコカー補助金など政策に依存した景気回復から、くらしの豊かさを感じさせる経済へと発展させなければならない。
台湾の馬英九(マー・インチウ)総統(61)が2期目に入った。1期目は中国との経済協力を進め、関係を大きく改善させた。次は、政治的な関係が最大の焦点だ。
総統は3選できない。だから4年間の任期中に「中国との和解」という歴史的な功績を残したい、という誘惑にかられるかもしれない。
だが、台湾の大陸委員会による世論調査では、7割が中国との統一も、独立もしない現状の維持を求めている。
馬氏はいまの安定を大切にし、政治的な対話は、民意に沿う形で慎重に取り組むべきだ。
就任演説では、中台が新たに協力分野を広げ、平和を固めていく必要がある、と述べた。
これまでに、定期直行便を開き、中国からの観光客受け入れを解禁した。自由貿易協定(FTA)にあたる経済協力枠組み協定も結んだ。
出来るところから手をつけたため、残されたのは難題ばかりになった。経済面でも、投資保護や紛争処理といった合意がまだの分野は、主権にかかわり譲りにくい問題だ。
政治面はなおさらだ。
選挙戦では、中国と敵対状態を終わらせる「平和協定」を将来的に結べないか検討すると打ち出した。だが、中国にとって協定は統一への一歩で、思惑の違いは大きい。民意の反発は強く、演説で触れなかった。進めるのは簡単ではない。
選挙後に、電力料金の値上げや米国産牛肉の輸入解禁などに手をつけ、支持率は2割ほどに落ちた。企業の中国進出が、雇用の悪化や所得格差の拡大を招いている。まずは足元の課題にしっかり対処すべきだ。
一方で、中国共産党は今年後半に指導部が大幅に交代する。習近平(シー・チンピン)国家副主席が総書記につく見通しだ。落ち着いて台湾政策に取り組むよう求める。
関係が良くなったとはいえ、中国は台湾に大量のミサイルを向けたままだ。米軍の介入を防ぐ軍事能力を備えようと急いでおり、空母も開発中だ。
習氏は、台湾の対岸の福建省で長く勤めた。台湾についての理解があるはずだ。ミサイルを撤去し、台湾の人たちの心配を取り除くべきだ。
中台関係の安定は、日本にとっても重要だ。テレビ事業が不振の日本の家電メーカーが台湾企業との提携を進めるなど、経済関係は厚みを増している。
馬氏は日本にFTAを結ぼうと呼びかけている。日中台がFTAで結ばれれば地域の緊密化につながり、安定にも役立つ。真剣に考える価値がある。