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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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いわゆる「てにをは」の使い方で意味はがらりと変わる。沖縄の集会を取材して、あらためて距離を感じたのは13年前だった。米軍普天間飛行場の県内移設に反対する1万2千人が「沖縄を返せ」を合唱した。かつて祖国復帰運動の際、沖縄と本土のへだてなく連帯を託して歌われた歌だ▼歌は末尾で「沖縄を返せ 沖縄を返せ」と繰り返す。ところが会場では「沖縄を返せ 沖縄に返せ」と歌われた。「を」が「に」に変わっただけだが、そこにはもう沖縄と本土の連帯感はない▼代わりに、島を自分たちに返せという、決然とした抗議があった。本土の記者として、歌声に縮こまった記憶は苦い。そして今、沖縄の不信は消えるどころか尖(とが)り、基地の押しつけを「差別」ととらえる意識が広まっているという▼本紙などの世論調査に、沖縄の2人に1人がそう答えていた。「いま沖縄は氷のように冷たい目で本土を見ている」と沖縄に住む作家仲村清司さんは言う。まなざしは「無関心という加担」への抗議にほかなるまい▼沖縄の本土復帰からきょうで40年になる。さる4月28日は、講和条約の発効で沖縄が日本から切り離されて60年の日でもあった。「屈辱の日」の呼び名が今も残るのを、どれだけの人が知っているだろう▼「押しつけ憲法とか言ってますがね、沖縄はその憲法、押しつけてももらえなかった」。旧コザ市の市長だった大山朝常(ちょうじょう)さんの怒りが耳によみがえる。誰もが無関係ではありえない、島の歴史と今がある。