HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 49152 Content-Type: text/html ETag: "f549e-1385-4bfc5574b375a" Expires: Fri, 11 May 2012 22:21:55 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 11 May 2012 22:21:55 GMT Connection: close 5月12日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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5月12日付 編集手帳

 「おむすびが、どうしておいしいのだか、知っていますか」。母親が娘に語って聞かせる。「あれはね、人間の指で握りしめて作るからですよ」。太宰治『斜陽』のひとこまである◆指で結ぶ。食べ物や料理の名称は数々あれども、「おむすび」(御結び)ほど素朴にして美しい呼び名はそうそうあるまい◆「おにぎり」ともいう。日本国語大辞典は「おむすび」の項目に語誌を載せ、「地域的には、東日本は『おむすび』、西日本は『おにぎり』であるが、最近は『おにぎり』が一般的呼称になりつつある」と述べている◆太宰その人と同じく「おむすび」の東日本に生まれ育ったせいか、いまでも「おにぎり」と呼ぶと、何だか別種の食べ物のような気がしてならない。子供の頃に母親が握ってくれたのが「おむすび」で、それ以外の出来合いはすべて「おにぎり」で…つまらない偏見をお許しあれ◆〈母の日のてのひらの味塩むすび〉(鷹羽(たかは)狩行(しゅぎょう))。あすは「母の日」、“てのひらの味”を思い出している方もあろう。二度と口にすることのできない身には、さて何の塩味か、ちょっとしょっぱい味覚である。

2012年5月12日01時36分  読売新聞)

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