主要企業の二〇一二年三月期決算の発表がピークを迎え、不振のテレビ事業に拘泥した家電各社の巨額赤字が目立つ。縮小市場への危機感から家電量販店の再編が起きたが、メーカーも続くべきだ。
パナソニック、ソニー、シャープ。日本を代表する家電三社の最終赤字は計一兆六千億円に上った。電機大手の中では、日立製作所や東芝、三菱電機の重電三社が、家電事業に“見切り”をつけ、社会インフラ事業などに軸足を移して収益を上げたのとは対照的だ。
家電各社の足を引っ張ったのはテレビ事業の壊滅的不振だ。主因は急激な値崩れだった。〇九年五月に家電エコポイント制度が始まり、同ポイントの半減や一一年七月の地上デジタル放送への移行といった流れの中で、薄型テレビは供給過剰となり値崩れが止まらなかった。
主力の32型が量販店では三万五千円程度で売られ、三年間でほぼ半額に落ち込んだ。需要の先食いとわかっていながら、メーカー側の過当競争、過剰投資がもたらした結果だ。業界への補助金ともいえる政府のエコポイント制度がそれを助長した面もある。
日本の家電産業は、技術力で一九九〇年代初頭には世界を席巻した。しかし、その後のデジタル化の特徴に対応できなかったために陥ったのが、今の姿だ。デジタル家電はそもそも値崩れすることが宿命である。安い部品を集めて、設計図通りに組み立てれば製品化できるのがデジタル品の特徴だからだ。
このため技術で先行しても、すぐに追いつかれ、価格も短期間で下がる。液晶テレビもプラズマも日本メーカーの開発品だが、今や世界市場では韓国や台湾製に価格面から太刀打ちできない。
さらに電機業界の積年の課題は、世界に例を見ない「主要メーカーの多さ」だ。縮小市場の国内で消耗戦に明け暮れ、疲弊している。世界の電機・電子産業の市場規模は、昨年の三百二十兆円から二〇年には四百五十兆円(みずほコーポレート銀行調べ)へ膨らむが、海外に打って出る余力が日本勢には少ない。
家電販売不振から量販店五位のビックカメラが同六位のコジマを買収する再編劇が起きた。メーカー側も、いつまでも自主経営にこだわっている状況ではない。成長する世界市場を視野に、海外勢も含めて資本や業務の提携・統合を目指す時ではないか。
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