HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 12 May 2012 00:21:58 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: 津波に襲われた直後のように流された自動車が、あちこちでひ…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 津波に襲われた直後のように流された自動車が、あちこちでひっくり返っていた。干拓地の圃場(ほじょう)は海水がたまり、昔の浦に戻っている。収穫されなかった野菜が、ビニールハウスを突き破りそうな勢いで伸びたまま、茶色く枯れていた▼福島原発から二十キロ圏内の警戒区域が、一年ぶりに解除された福島県南相馬市小高区をこの連休の谷間に訪ねた。復興から取り残された地域を歩くと、時計の針を一気に戻されたような感覚に陥った▼自由に出入りできるようになったとはいえ、戻っていた人は少なかった。遠くの仮設住宅から津波で壊れた家を見に来ていた男性は「建て直すと一千万円。そんな金ありますか」と絶望した口ぶりだ▼中心街のクリーニング店では、一年以上も吊(つる)されている品物がガラス越しに見えた。街のシンボルであった古い蔵造りの民家も倒壊して道をふさいだままで、時は止まっていた▼「死の棘(とげ)」などの作品で知られる作家の島尾敏雄は小高出身。お墓に寄ると、新しい花が供えられていた。周囲も同じだ。こんなときも、死者が大切にされることにほっとする▼震災から一年二カ月。生活支援などにボランティアの力点が移っている被災地が多いが、南相馬では今も泥かきや、がれきの片付けの作業をしてくれるボランティアを熱望している。体力と時間、そして、熱い心のある若者よ、来れ。

 

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