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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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ベトナム戦争の取材体験に基づく開高健の小説「輝ける闇」は、表題から意表を突く。ドイツの哲学者、ハイデガーの評言を引いたそうだが、読まずして鮮烈な緊張感に包まれる。常識の裏をかいた「逆さまの形容」は、多用は禁物ながら便利な修辞である▼〈マイナス100度の太陽みたいに/身体(からだ)を湿らす恋をして……〉。桑田佳祐さんの佳曲「真夏の果実」の詞が胸に残るのも、灼熱(しゃくねつ)カラリであるべき日輪を、しっぽり冷涼に描いた技の冴(さ)えだろう▼「太陽まもなく冬眠?」の本紙記事に、ひんやりと不安を覚えた。国立天文台によると、太陽の活動に異変が生じ、地球が「低温期」に入るかもしれない。万物のエネルギー源だけに気がかりだ▼太陽には南北に磁場の極があり、ほぼ11年の周期で正負が同時に入れ替わる。ところが、北極の反転が1年ほど先行し、活動低下の兆しがあるそうだ。磁場に連動する黒点の現れ方も、17世紀後半に始まった低温期に似ているらしい▼往時の異変を、各国の古文書がとどめている。ロンドンのテムズ川が凍り、京都では桜の開花が遅れた。凶作や飢饉(ききん)の多発は、政治や経済を揺るがした。低温期は約70年続いたという▼過日の小欄で触れた氷河期に比べ、太陽活動の盛衰はずっと短い周期で繰り返す。前者を潮の満ち干とすれば、寄せては返す波だろうか。温暖化のさなか、「冷たい太陽」は「良い衰弱」かもしれない。だからといって、省エネの手を緩める「悪い安心」には浸れない。