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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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雨音の変調に振り向くと、ベランダで雹(ひょう)が踊っていた。白い粒の吹きだまりをすくい、はるか上空の寒気を想像する。しかし両手に山盛りの氷は、猛威の端で起きた異変にすぎなかった▼大型連休の最終日、関東地方を異常気象が見舞った。茨城県つくば市や栃木県真岡(もおか)市で竜巻が発生、1人が亡くなり、50人超が重軽傷を負った。建物の損壊は計1500棟を超す。最大級の竜巻被害である▼関東ではその時、湿気を含んだ南の暖気が低空に流れ込んでいた。上空との温度差は上昇気流を生み、巨大な積乱雲となる。その底から雹が降り、雷がとどろき、竜巻が起こる。神出鬼没の巨竜は悪意を宿したように、家財を巻き上げ、駆け抜けた▼世界的には米国の真ん中あたり、オクラホマ、カンザス、ミズーリ州などが「竜巻銀座」として知られる。逃げ込むための地下室を備えた住宅も多いそうだ。だが面積あたりの発生数では、関東平野も大して違わないらしい▼800年前に書かれた「方丈記」に、春の京を襲った「辻風」の記録が残る。〈三四町を吹きまくる間に、こもれる家ども、大きなるも小さきも一つとして破れざるはなし〉。地震や津波と同様、竜巻は昔から人の都合にお構いなく暴れてきた。文明が巡り合わせ、被害が刻まれる▼連休中、中高年登山者の悲劇も相次いだ。季節が移ろうこの時期、天の気まぐれに山も里もない。ひとたび牙をむいた自然の前で、悔しいけれど、人は飛べず泳げずの、弱き生き物に返る。