HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 48734 Content-Type: text/html ETag: "f5587-134f-4bf38a52ef3c8" Expires: Fri, 04 May 2012 23:21:55 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 04 May 2012 23:21:55 GMT Connection: close 5月5日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




現在位置は
です

本文です

5月5日付 編集手帳

 画家の安野光雅さん(86)がまだ若いパパの頃である。自宅に指圧師を招いて、肩を指圧してもらった。顔をしかめて痛みに耐えていると、当時3歳のお嬢ちゃんがどこからか物差しを持ち出して、指圧師の頭をぶったという◆安野さんは昨年出版した『絵のある自伝』(文芸春秋)に書いている。〈(わが子のしてくれたことに)わたしは一生をかけて報いたいとおもっている〉◆「親の恩」があるように、「子の恩」というのもあるのだろう。半世紀ほどの歳月を隔て、傘寿の坂を越えて今なお現在進行形の感情であることに胸を突かれる◆〈人の親には病となるも子の心、薬となるも子の心…〉。近松門左衛門の『生玉心中(いくだましんじゅう)』にある。親とは悩みと迷いのかたまりで、子供がむずかしい年頃になればなおさら、“病”の種ばかりが舞い込む。安野さんにとって「物差し」の記憶がそうであるように誰もが、忘れがたい何かの思い出を“薬”に長い坂をのぼっているのかも知れない◆きょうの「こどもの日」、胸の奥の宝石箱から小さな“薬”の記憶を取りだしては、息を吹きかけて磨いてみるのもよろしかろう。

2012年5月5日01時45分  読売新聞)

 ピックアップ

トップ
現在位置は
です