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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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たとえば春から米、秋からは麦と、同じ田畑で二つの作物を育てる農法が二毛作(にもうさく)だ。毛(もう)には実りの意味があり、不毛といえば成果が出ないこと。ちなみに「不毛」を含む本紙記事を検索すると、昨今は国内政治の話ばかりである▼育毛剤や増毛術の広告を見ぬ日はない。あれこれ試し、「不毛の努力」に疲れた向きには朗報だろう。東京理科大の研究チームが、本人の「毛の元」からフサフサを実現する道を探っているそうだ▼毛を生やす毛包(もうほう)の細胞をマウスから取り出し、生まれつき毛のないマウスの皮膚に移植する。約3週間後、74%の率で毛が生えたという。体毛は体毛に、ヒゲはヒゲになり、ちゃんと生え替わる。ヒトの毛包細胞で試すとヒトの毛が生えた▼本数を稼ぐには細胞増殖の技術が要るが、わが遺伝子で荒野の「多毛作」に挑める日も夢ではない。地毛(じげ)が生やし放題となれば、カツラを潔しとしない人も捨て置けまい。担当の辻孝教授は「10年ほどで、一般の脱毛治療や増毛に役立てたい」という▼無論、加齢ゆえの薄毛なら流れに任せる手もある。「髪は滅んでも中身は成長するんだ、人間は」。コラムニストの神足裕司(こうたり・ゆうじ)さんが、薄毛仲間との対談集『誇大毛想』(扶桑社)で喝破していた▼頭髪の再生は、人目を気にせず前向きに生きる策には違いない。選択肢が多いのは結構だが、見た目より中身の戒めもある。頭上の異変は、ひょっとして自分を磨けというお告げかもしれない。内なる豊作を目ざすのもいい。