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2012年5月4日(金)付

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高速バス事故―乗客守れるルール急げ

「疲れていた」「居眠りしていた」。関越自動車道で46人が死傷する事故を起こした高速ツアーバスの運転手が、警察にそう話しているという。原因の究明は捜査を待たねばならない。[記事全文]

厚生年金基金―代行廃止へステップを

AIJ投資顧問による年金消失事件を受け、厚生労働省の有識者会議や民主党の検討チームが、企業年金の制度見直しを議論している。有識者会議は6月に報告をまとめる。焦点は、厚生[記事全文]

高速バス事故―乗客守れるルール急げ

 「疲れていた」「居眠りしていた」。関越自動車道で46人が死傷する事故を起こした高速ツアーバスの運転手が、警察にそう話しているという。

 原因の究明は捜査を待たねばならない。けれど、今すぐ始めるべきことがある。

 高速バスの安全基準をもっと厳しいものに見直すことだ。

 国土交通省の今の基準では、ツアーバスなどの貸し切りバスは1日に9時間、670キロを1人の運転手に運転させていい。東京―岡山にあたる距離だ。しかも、休憩なしで連続4時間走らせていい。いくらプロでも、これは過酷だ。

 総務省の調査によると、運転手の9割が、運転中に居眠りや睡魔を経験している。そして、長距離運転や夜間運行、休み不足を原因にあげている。

 また、運転手の勤務時間は、働く人の平均より3割も長い。

 いまの基準は甘すぎる。調査結果は、そう物語っている。

 長距離の夜行バスに交代要員の運転手を必ず乗せる。もっとこまめに休憩させる。夜間は昼より基準を厳しくする。

 少なくとも、この3点の改善は必要だ。

 国交省は総務省から2年前に改善を求められたが、「基準を守らない業者への対応が先」と動きが鈍かった。

 もう、放置は許されない。

 バスやタクシーは10年ほど前に規制緩和が行われた。新規参入を促し、競争でサービスを高め、価格を下げる。それが改革の狙いだった。

 確かに便利にはなった。

 ただ、競争のしわ寄せで運転手が過重な労働を強いられ、安全に影響するのではないか。初めからそう心配されていた。

 それを象徴するのが高速ツアーバスだ。安さ、便利さで急成長する一方で、事故や法令違反の多さが指摘されてきた。

 ツアーバスは旅行会社が乗客を募り、バス会社に運行をゆだねる形で運営されている。旅行会社はバス会社に無理を言い、バス会社は運転手に無理を言う悪循環に陥りやすい。国交省が旅行会社の責任を重くする方針を示したのは、うなずける。

 新規参入しやすいようにハードルを下げる代わりに、開業後は安全の質を厳しく定期的に点検する。本来、それが規制緩和の発想である。規制を緩めればこそ、安全面のチェックは厳しくすべきなのだ。

 運輸業界は全体に過労死が多い。運転手に無理を強いれば、被害は利用者に及ぶ。タクシーやトラックも含めて、総点検しよう。

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厚生年金基金―代行廃止へステップを

 AIJ投資顧問による年金消失事件を受け、厚生労働省の有識者会議や民主党の検討チームが、企業年金の制度見直しを議論している。有識者会議は6月に報告をまとめる。

 焦点は、厚生年金基金の存廃だ。加入者が本来、国に支払う厚生年金の保険料の一部を預かり、運用と給付を「代行」しているが、運用損などで代行に必要な資金を確保できていない基金が約36%を占める。

 民主党が先月まとめた中間報告は、厚生年金基金の「将来的な廃止」を提言した。私たちもその方向で議論を進めるべきだと考える。

 加入している企業の多くは中小零細だ。掛け金を増やす余裕のないところが多い。約束した年金額を、少ない掛け金を元手に実現しようとすると、リスクの高い運用を強いられる。放置すると、新たな運用失敗や財政悪化を招きかねない。

 繊維や運輸など構造的に経営が厳しい業種では、社員数の減少とともに、掛け金の収入も少なくなる。積立金を取り崩して給付を行うので、手持ちの資金は減っていく。近い将来、枯渇しかねない基金もある。

 埋めるべき穴が大きくなるほど、解決は難しくなる。穴埋めする体力がないと診断された基金は、強制的に解散させて資金を国が吸い上げるといった仕組みづくりを急ぐ必要がある。

 問題は、代行部分が公的年金であるという点だ。

 単なる企業年金なら、最後は給付を諦めれば済む。だが、厚生年金基金を解散した場合、代行部分の穴を埋めるお金を、加入企業が連帯して国に返さなければならない。

 分割返済も可能だが、その間に一部の企業が倒産すれば、同じ基金に残った企業の負担が増える。連鎖倒産を防ぐため、どの程度の負担が可能なのか見極めなければならない。

 もし返済できない場合、基金とは関係ない厚生年金の加入者が負担したり、国が肩代わりしたりするしかない。

 民主党の報告は、厚生年金本体や税による「新たな負担」はしないことを「基本とする」とした。ただ、公的な負担が全くなくても解決できる印象ばかりが先行すれば、後の選択肢を狭めてしまいかねない。

 最終的な解決策がどうあれ、基金の加入企業や加入者・受給者がぎりぎりまで穴埋めの自助努力をすることが前提だ。

 その努力が見える基準やステップを整備して初めて、代行制度の廃止に向けた道筋が見えてこよう。

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