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5月2日付 編集手帳

 電気を帯びたように神経の張りつめた感じが伝わってくる。バスの運転手を“荷電体”と形容したのは吉野弘さんである。『ヒューマン・スペース論』という詩に書いている◆バスの運転手が運転台につくと、その瞬間に彼自身がバスになるのだ――と詩人は言う。〈彼は/彼の内部に/客をのせて走る/…内部に配慮をみなぎらせ/外部への目覚めた皮膚をもち/荷電体のように走る/彼〉(思潮社『吉野弘詩集』より)◆バスを運転する人ならば誰しも、荷電体たらんと心がけていることだろう。それでも事故は起きた◆運転手の居眠りが直接の原因だとしても、バス会社の運行管理に過重労働などの落ち度はなかったか。関越自動車道の防音壁にツアーバスが衝突した事故では、一瞬のうつらうつらで花も実もある7人の人生が終わった。ハンドルを握る人は皆、原因と結果の隔たりに身の震える恐ろしさを味わったはずである◆バスに限るまい。大型連休も後半に入る。詩の後段には、〈他人の運命を/君自身の運命と感じるように〉とある。疲れたら無理をせず、“荷電体”を保ったまま、どうかよい旅を。

2012年5月2日01時21分  読売新聞)

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