働く人たちの祭典・メーデーの季節だ。日本経済は低迷が続き、労働環境は一段と厳しさを増す一方で、メーデーの存在がかすんでいる。労働組合は宣言だけではなく、行動こそが重要だろう。
完全失業率は4・5%と高水準が続く。賃金も、毎月勤労統計調査の現金給与総額(約二十六万五千円)は横ばい状態だ。デフレ経済で将来不安から消費を手控える「守りの意識」が強く、統計の数字以上に国民の生活実感は悪い。
そんな中、頼みとなるはずの労働組合が沈滞している。組合離れの実態は目を覆うばかりだ。
国内の労働組合員数は昨年、ほぼ半世紀ぶりに一千万人を割り込んだ。ピーク時の一九九四年から二割減の九百九十六万人になった。組織率は18%台まで落ちた。
背景は正社員の減少と非正規社員の増加だ。経済のグローバル化に伴って、人件費抑制のため、企業が正社員を派遣労働者に置き換えたためで、今や非正規の割合は三割を超えた。
危機感を強める連合は非正規の組合化に取り組み始めたが、もともと大企業の正社員中心の労組だ。スーパーのパートらが組合員の48%を占めるUIゼンセン同盟を除けば、連合の非正規対応は鈍い。これまで終身雇用など日本型雇用を担ってきただけに、多様化する労働層に対処できていない。
それがメーデーにも表れてきた。先月二十八日にあったメーデー中央大会は「すべての働く者の連帯で、働くことを軸とする安心社会を実現する」との宣言を採択した。しかし、派遣切りが問題となった二〇〇七、〇八年は「ストップ・ザ・格差社会」と明快なスローガンだったのに対し、非正規対策の決意が伝わってこない。
雇用環境が大きく変わった以上、労組の戦略変更は必然だ。拡大する非正規社員を取り込まないかぎり弱体化は止められない。非正規の要求実現を進めるしかない。正社員になりたいのになれない「不本意の非正規」は派遣や契約社員でそれぞれ四割を超えている。
まずは希望者の正社員化に全力を挙げる。また、試用期間を設けることで採用を後押しする「トライアル雇用」や、賃金格差をなくしていく「同一価値労働・同一賃金」を普及させるなどだ。
宣言を採択するだけのメーデーではなく、目に見える果実を示す。そうでなければ存在意義は失われてしまうだろう。
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