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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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街宣車がずらりと並ぶ駐車場を抜けると、一転して森厳の領域だった。参道の杉並木の奥にはイロハモミジの若葉がきらめいている。先の「昭和の日」、東京都八王子市の武蔵陵墓地を訪れた▼広い緑地に、昭和天皇と香淳皇后、大正天皇と貞明皇后の四つの陵(みささぎ)。それぞれに鳥居を配し、巨大なお椀(わん)を伏せたような上円下方墳が100メートルほどの間隔で並ぶ。江戸時代からの伝統にのっとり、いずれも土葬である▼天皇、皇后両陛下は、大がかりな土葬より、一般と同じ火葬をお望みだという。お二人の合葬も視野に、陵も葬儀も簡素に、とのお考えだ。即位時から「象徴」だった初の天皇らしく、お別れの様式も転換点になるかもしれない▼宮内庁の羽毛田長官が明かしたご意向は、「生前の遺言」といえる。お墓の用地に限りがあるうえ、国の台所が厳しい折、国民に負担をかけまいとの配慮らしい。歴代では41人の天皇が火葬され、夫妻の合葬も例がある▼「テニスコートの恋」に始まり、民間初の皇太子妃、同居での子育てと、新時代の皇室を体現してきたご夫妻だ。「薄葬」の思いは時宜にかなうし、仲むつまじいお二人には合葬がふさわしい▼世間一般に近い感覚に、改めて親しみを覚える。むろん、心臓手術を乗り越え、英国訪問を心待ちにされる陛下に、送りの話は少々早い。周囲が持ち出せないからこそ、自ら切り出されたのだろう。諸事万端への気遣いを知るほどに、その日が少しでも遅かれと願わずにはいられない。