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天声人語

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2012年5月1日(火)付

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 バスにする理由は人それぞれだ。〈誕生日夫(つま)が忘れしこんな日はバス旅パンフレット一人眺むる〉田中洋子。憂さ晴らしの一人旅も、家族旅行もある。深夜便なら、誰もが夢の中、目的地の朝に自分を先回りさせていよう。夜行バスは、客の数だけ明日を乗せている▼関越道の惨事は、乗客の大型連休を暗転させた。未来ごと消えた人も多い。夜通し走った車は日の出前、時速100キロ近くで防音壁に突っ込んだらしい。鉄の壁は車体を切り裂き、左側の座席を破壊した▼金沢から富山、東京を経て東京ディズニーリゾートまで片道3500円。規制緩和で市場が膨らむ高速ツアーバスである。ツアーを企画した大阪の旅行業者は、稼ぎ時の増便を千葉のバス会社に頼んでいた▼価格を競う旅行業者は、安く運んでくれるバス会社を選ぶ。勢い、交代なしで走れる、無理が利く運転手を重用するバス会社も出てくる。かくして利用者が求める「格安」には、過労という危険が素知らぬ顔で同乗することがある▼陸海空とも、旅客業が張り合うのは価格とサービスだ。安全は譲りようのない聖域だが、その鉄則さえ崩してしまうほどの過当競争。総務省の調査では、貸し切りバス運転手の9割が睡魔を経験していた▼居眠りしたドライバーを責めるのはたやすいけれど、運転手の我慢比べで成り立つ競争は危うい。道中に不安なく、心穏やかに送り届けてこその安さ自慢だ。夜行の業界が競って眠らせるべきは、乗務員ではなく乗客である。


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