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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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バスにする理由は人それぞれだ。〈誕生日夫(つま)が忘れしこんな日はバス旅パンフレット一人眺むる〉田中洋子。憂さ晴らしの一人旅も、家族旅行もある。深夜便なら、誰もが夢の中、目的地の朝に自分を先回りさせていよう。夜行バスは、客の数だけ明日を乗せている▼関越道の惨事は、乗客の大型連休を暗転させた。未来ごと消えた人も多い。夜通し走った車は日の出前、時速100キロ近くで防音壁に突っ込んだらしい。鉄の壁は車体を切り裂き、左側の座席を破壊した▼金沢から富山、東京を経て東京ディズニーリゾートまで片道3500円。規制緩和で市場が膨らむ高速ツアーバスである。ツアーを企画した大阪の旅行業者は、稼ぎ時の増便を千葉のバス会社に頼んでいた▼価格を競う旅行業者は、安く運んでくれるバス会社を選ぶ。勢い、交代なしで走れる、無理が利く運転手を重用するバス会社も出てくる。かくして利用者が求める「格安」には、過労という危険が素知らぬ顔で同乗することがある▼陸海空とも、旅客業が張り合うのは価格とサービスだ。安全は譲りようのない聖域だが、その鉄則さえ崩してしまうほどの過当競争。総務省の調査では、貸し切りバス運転手の9割が睡魔を経験していた▼居眠りしたドライバーを責めるのはたやすいけれど、運転手の我慢比べで成り立つ競争は危うい。道中に不安なく、心穏やかに送り届けてこその安さ自慢だ。夜行の業界が競って眠らせるべきは、乗務員ではなく乗客である。