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朝日新聞社説をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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中央省庁の出先機関の権限や人員を都道府県に移していく。民主党が掲げた地域主権改革の柱のひとつだ。その基本案がようやくまとまった。分権が進むかに見える。[記事全文]
ミャンマー、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナムのメコン川流域国に、日本は来年度から3年間で約6千億円の途上国援助(ODA)などに乗り出す。東南アジア諸国連合(ASEAN[記事全文]
中央省庁の出先機関の権限や人員を都道府県に移していく。民主党が掲げた地域主権改革の柱のひとつだ。その基本案がようやくまとまった。
分権が進むかに見える。
だが目を凝らすと、改革を潰しかねない項目が多い。法案づくりの際に徹底的に排除しなければならない。さもなければ、分権改革が逆行してしまう。
基本案は自治体が連携する広域組織を受け皿にする。具体的にはまず、関西広域連合と九州知事会がつくる広域組織に、地方整備局(国交省)、経済産業局(経産省)、地方環境事務所(環境省)を丸ごと移す。
出先改革によって、国と地方の二重行政をなくす。国会の目が届かない事業の選定、発注などを、自治体議会や住民がチェックすることで、地域の実情に応じた施策を効率的にできるようになる。
こんな考え方で、民主党政権は10年に「出先機関の原則廃止」を閣議決定した。
だが、権限も組織も奪われる省庁はいまも納得していない。だから、内閣府が国交省などと折衝してつくった基本案には、まだ省庁側が巻き返すための仕掛けが込められている。
たとえば、広域組織の仕事に対して「国による関与を必要に応じて柔軟に設ける」との規定がある。国交省はもっと国が強力に関与できる文言にするよう求めている。
また国交省は、大規模な災害が起こったときには国交相が個別の法令によらずに広域組織を直接に指揮監督できるようにすべきだ、と主張する。
広域組織に各自治体の事務も持ち寄るとも書いてある。国交省はこれが仕事を移す前提だといい、知事側は自分たちの判断に任せろと反論している。
仮に国交省の言い分がすべて通ったらどうなるか。
国と自治体の仕事を合わせて巨大化した広域組織が、国の新たな出先機関になるだけだ。
これでは、分権とは反対の中央集権化である。万一そんなことになるなら、むしろ現状のままがよいという声が自治体側から出てくるのも当然だ。
一方で市町村には、災害時の対応への不安などを理由に、地方移管への反対意見が根強い。大震災の後だけに、その思いは理解できる。
だが、これは国の権限を県へ、県の権限を市町村へ渡していく分権改革の第一歩だ。市町村の広域組織へのかかわり方などを明確にしつつ、移管を進めるのが筋だろう。改革の原点を忘れてはならない。
ミャンマー、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナムのメコン川流域国に、日本は来年度から3年間で約6千億円の途上国援助(ODA)などに乗り出す。
東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で遅れ気味の地域の発展を、日本が手助けすることには大きな意味がある。
なかでも注目すべきは、ミャンマーへの過去の円借款ざっと3千億円を段階的に放棄し、25年ぶりに供与を再開することだ。野田首相が先日、テインセイン大統領に約束した。
昨春に軍政から民政に移り、長く軟禁状態に置かれたアウンサンスーチーさん率いる国民民主連盟(NLD)も4月の議会補欠選挙で議席を得た。こうした民主化への歩みを評価して、円借款再開に踏み切る。
だが、実施にあたっては二つの注文がある。
一つは、強権的な政府の体制温存に手を貸すような援助にしてはならないということだ。
いまもミャンマーの国会議員の8割は軍人や軍出身者だ。非常時に軍が全権を握ることを定めた憲法は事実上、改正不可能なままだ。スーチーさんらが議会で活動を始めても、民主化への足取りが一直線に進むわけではないだろう。
このため、日本政府は債権放棄のうち約1700億円分は、向こう1年間のミャンマー政府の改革努力を見て決めることにしている。野田首相も大統領に「改革を進めるためのひとつの勝負どころだ」と語った。
では、どうやって民主化をチェックするのか。政府は現地の大使館を通じての一般的な情勢判断によるというが、それでは不十分だ。NGOなど第三者も加えた委員会や、国会議員による調査チームを設け、具体的な指標にてらして判断しなければ、透明性は確保できない。
もう一つは、過去の検証だ。
免除する3千億円は、政府の今年度のODA予算5600億円に比べても相当な額であり、異例の大盤振る舞いであることは明らかだ。
だからこそ、過去のODAが具体的にどのように使われ、どんな効果を上げたのかを総括するのが筋だ。自民党政権時代のこととはいえ、当時の政府の判断の是非も含めて、貸手責任をきっちりと問うべきだ。
人口6千万あまりのミャンマーの市場とその発展を、日本の経済界は熱く期待している。来日した大統領のもとには、多くの企業トップが訪れていた。
だが、「民主化なくして援助なし」という姿勢を、日本政府は堅持しなければならない。