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悲惨な事故がまたおきた。道路で失われる命をこのままにできない。対策を直ちにとろう。群馬県の関越自動車道でおきた高速バスの事故は、連休ののどかさを吹き飛ばした。大型バスの[記事全文]
高度成長期に整備した道路や港など、様々な社会インフラが更新期を迎えている。少子化で人口は減っていく。高齢化に伴う社会保障費の増加で財政難はますます深刻だ。経済は低成長に[記事全文]
悲惨な事故がまたおきた。道路で失われる命をこのままにできない。対策を直ちにとろう。
群馬県の関越自動車道でおきた高速バスの事故は、連休ののどかさを吹き飛ばした。大型バスの座席でまどろむ人たちは、こんな目にあうと考えてもいなかっただろう。
今月は大きな事故が続いた。中旬に京都市の繁華街で軽乗用車が暴走し、運転者とあわせて8人が死亡した。京都府亀岡市では登校中の小学生と保護者計10人がはねられ、3人が亡くなった。千葉県ではバス待ちの列に車が突っ込み、小学生1人が命を奪われた。
車と人の関係はこのままでいいのか。多くの人がそう考えたのではないか。
事故の事情はそれぞれに異なる。居眠りしていた、ぼんやりしたと話す運転者が続くのはとても気になるが、背景は今後の捜査を待たねばならない。だが今からできることはある。
夜をおして走る旅行バスは、ネットで安さを比べられ、厳しい競争をしている。それでも互いに安全を確保して走る方法があるはずだ。乗客も、運行する会社も安心できるルールを考える必要がある。
一般道で続いた事故についてはまず、通学路の安全だ。
たとえば、亀岡市の事故がおきたのは、車がやっとすれ違うことができる細い府道だった。並走する国道の抜け道になり、交通量が多かった。
地元の要望を受け、府は道路の両側に幅1メートルほどの路側帯をつくったが、ガードレールなど防護柵はなかった。千葉の事故も防護柵のない県道でおきた。
通学路に防護柵を備えることを基本にしよう。路面を所どころ盛り上げ、速度をあげにくくすることも有効だろう。
さらに、登下校の時間帯は車の乗り入れを禁じ、校区の広がっているところはスクールバスを走らせる。地域の事情にあわせた保護策をいち早くとり入れるべきだ。
自治体の台所は苦しいが、子どもを守るために必要だ。地元の人たちや企業に加え、自動車産業の寄付でまかなう基金をつくって対策をとれないか。
警察庁は昨秋から、小学校や幼稚園などのある住宅地の生活道路を時速30キロ以下にする区域指定を始めた。歩行者の交通事故死を減らすことが期待できる「ゾーン30」という施策だ。欧州で効果をあげている。国内での広がりはこれからだ。エアバッグなどで運転者の安全は進んだが、歩行者はまだ危険な状態に置かれている。
高度成長期に整備した道路や港など、様々な社会インフラが更新期を迎えている。
少子化で人口は減っていく。高齢化に伴う社会保障費の増加で財政難はますます深刻だ。経済は低成長にあえぐ。
公共投資は、新設から維持・更新へとかじを切るべきだ。
このことを浮かびあがらせるのが首都高速道路である。
1964年の東京五輪をにらんで着工された。既存の道路や川の上空を活用し、300キロの路線の大半を橋やトンネルが占める。このため、補修費がかさみ、日々の点検費を含めると年600億円に達する。
首都高会社は急いで補修が必要な箇所の手当てに追われ、「計画的に補修する」損傷は10万カ所に近づく。道路自体の架け替えなど大規模更新が避けられないのではないか。こんな問題意識から専門家による検討が始まった。兆円単位の費用が必要、ともささやかれる。
09年度の国土交通白書は道路や空港、港湾など8分野の公共事業を分析した。維持・更新費は総事業費の半分(10年度)から増えていき、総額が横ばいなら、37年度には維持・更新すらままならなくなる。
新設どころか、一部の社会資本は利用をあきらめざるをえない、ということだ。
一方で、ようやく完成し始めた大型事業もある。80年代末のバブル期に計画された新東名高速道路がその象徴だろう。
4月中旬、全区間の約6割にあたる静岡県内の162キロが開通した。東名高速ではこの区間で年2500回の渋滞が発生していたが、ほぼ解消する見込みという。全線が開通すれば東西を結ぶ大動脈が二重になり、大地震と津波への備えとなる。
いいことずくめのようだが、費用は膨大だ。事業費は2兆6千億円。20年度までに開通させる残り4割の区間に、あと1兆8千億円かかる。
通行料収入で返済する仕組みだが、計画当時には想定しなかった体力低下に直面する日本経済への負担は小さくない。そして、今はピカピカの新東名も、いずれ更新が必要になる。
国交省は、凍結していた高速道路の建設再開や4車線化、整備新幹線の新規着工、ダムの新設など、大型公共事業を次々と打ち出している。問題意識や危機感はないのだろうか。首相もこれに異を唱えないのはどうしたことか。
経済成長でパイが大きく広がる時代はとうに過ぎた。早く頭を切りかえないと、後世に大きなツケを残す。