HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 52167 Content-Type: text/html ETag: "a347a-1e42-4bebfb7eb2ca1" Expires: Sat, 28 Apr 2012 21:21:10 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 28 Apr 2012 21:21:10 GMT Connection: close 消費税法案 軽減税率で低所得者層に配慮を : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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消費税法案 軽減税率で低所得者層に配慮を(4月29日付・読売社説)

 ◆参考にしたい欧州の先行事例

 社会保障と税の一体改革は、日本の将来を左右する最重要課題である。消費税率引き上げ関連法案を巡る与野党の動きは緩慢すぎる。

 関連法案の審議入りは、大型連休明けにずれ込んだ。特別委員会での実質審議は5月中旬からだ。このままでは、6月21日までの会期内に成立しそうもない。

 こうした中、自民党内でようやく、消費増税法案の対案を検討する動きが出てきた。建設的な姿勢として評価できる。自民党は対案をまとめ、政府に論戦を挑んでもらいたい。

 ◆自民党は対案を示せ

 自民党内で浮上した対案は、2015年4月に消費税率を現行の5%から10%へ一度に引き上げる内容である。

 14年4月に8%、15年10月に10%へ2段階で上げる政府案とは、引き上げ方式が異なる。

 長年政権を担ってきた自民党は危機的な財政状況に責任がある。遅ればせながら、財政再建へ本腰を入れようというのだろう。

 自民党は10年の参院選でも「消費税10%」を公約していた。引き上げ後の税率では政府案と一致しており、政府・民主党と合意形成を図る余地は十分あるはずだ。

 野田首相は、消費増税法案の成立に、「政治生命を懸ける」との覚悟を繰り返し強調している。

 輿石幹事長ら民主党執行部と連携し、与野党協議の実現に一層の指導力を発揮すべきだ。

 消費増税法案を巡る国会審議で一つの焦点となるのは、増税にあたって、収入の少ない人の負担をいかに軽減するかである。

 ◆ばらまき給付は問題だ

 法案は二段構えの措置を盛り込んでいる。税率を8%にする際、低所得者に現金を渡す「簡素な給付措置」を実施する。

 その上で、税率を10%にする時、所得に応じて減税か、現金支給を行う「給付付き税額控除」を導入するという内容だ。

 消費税は、低所得者ほど負担感が大きいとされる。

 それを和らげる措置は必要だとしても、民主党内で、簡素な給付措置にかこつけて金額の大幅な上積みを求める声が強まっているのは、問題ではないか。

 そもそも今回の一体改革では、社会保障分野に、介護保険料の軽減や年金給付の加算など計1兆4000億円の低所得者対策が含まれている。現金支給の金額や対象範囲を膨らませ、新たなバラマキにしてはならない。

 政府案の給付付き税額控除を実施するには、世帯所得を正確につかむことが必要になる。

 しかし、共通番号制度が導入されても、不動産や金融資産の収入など所得全体を完全に把握するのは難しいと懸念される。

 日本より前から付加価値税を導入している欧州諸国の大半は、税率こそ20%前後と高いが、食料品など生活必需品の税率を低く抑える軽減税率を採用している。

 税率を引き上げる場合も、暮らしに欠かせない商品は軽減税率が維持される。機動的な増税を可能にする利点と言える。

 活字文化と言論報道の公共性を重視して、新聞や書籍などの税率を大幅に低くする国も多い。イギリス0%、フランス2・1%、イタリア4%などで、「知識には課税しない」との伝統が定着しているからだという。

 日本では、消費税率が欧州ほど高くないため、これまで軽減税率の必要性があまり論議されなかった。欧州の先例は参考になる。

 読売新聞が今月実施した世論調査では、消費税率の引き上げ時に軽減税率を「導入すべきだ」とした人が全体の74%を占めた。

 野田首相が先週、軽減税率を検討するという考えを表明したのは妥当な判断だ。首相はテレビ番組で、「国民や野党からいろいろ提案があると思う。真摯(しんし)に向き合った議論をしたい」と語った。

 ◆与野党は議論を急げ

 首相発言を受けて、軽減税率を議論する機運が高まっている。

 公明党の石井政調会長は記者会見で、「軽減税率の導入と給付付き税額控除のどちらもあり得る。具体的な中身をきちんと出すことが重要だ」と述べた。

 自民党も、税率を10%に引き上げた際、生活必需品に軽減税率を導入する案を検討している。

 ところが、政府は「必要な税収が確保できない」「対象の線引きが難しい」などを理由に、法案に軽減税率を盛り込んでいない。

 どんな制度が現実的で、国民にも分かりやすいか、与野党はしっかり議論してもらいたい。

2012年4月29日01時28分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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