HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 49203 Content-Type: text/html ETag: "f5e1c-142a-4beab6bfb4a4b" Expires: Sat, 28 Apr 2012 01:21:17 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 28 Apr 2012 01:21:17 GMT Connection: close 4月28日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




現在位置は
です

本文です

4月28日付 編集手帳

 詩人の金子光晴にベルギーのブリュッセルを旅した紀行文がある。〈盛り場にいても、羽目を外した少女のいじらしい悔恨のような、動悸(どうき)の音がききとれるほど、しずかな街の気配である〉(中公文庫『ねむれ巴里(パリ)』)◆古池に(かわず)の飛び込む音ではないにせよ、動悸までが聞こえてきそうな街には俳句も似合うだろう。ブリュッセルにある日本の欧州連合(EU)代表部に「観光俳句ポスト」が設置された◆俳人正岡子規の出身地、松山市が市の内外に設けているポストには、誰でも自作の俳句を投函(とうかん)できる。ここが103か所目で、海外では初めてという。〈果樹園に再び満つる花を()で〉。俳句愛好家のヘルマン・ファンロンパイ氏(EU大統領)が投函した句の日本語訳である。震災の復興にも祈りをこめてくれたのだろう◆病床の子規は旅をする夢を歌にしている。〈足立たば北インヂアのヒマラヤのエヴエレストなる雪食はましを〉。足が立てば、登って雪が食いたいな、と◆きょうから大型連休が始まる。旅は人を詩人にするという。誰かが旅先でひねる五七五に、天上でその人も目を細めることだろう。

2012年4月28日01時15分  読売新聞)

 ピックアップ

トップ
現在位置は
です