HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 49616 Content-Type: text/html ETag: "fb308-1500-4be5b19a208d2" Expires: Tue, 24 Apr 2012 01:21:49 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Tue, 24 Apr 2012 01:21:49 GMT Connection: close 4月24日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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4月24日付 編集手帳

 俗謡にある。〈可愛(かわ)いわが子に旅させ親御 ()いも(つら)いも旅で知る〉。親は子供に代わって人生を闘ってやることはできない。できるのは闘い方を教えることだけである。あとは自力で苦難を乗り越えてくれると信じ、旅立ちを見送るしかない◆寒くないか。ひもじくないか。敵に襲われていないか…。巣づくりや抱卵の訓練を受けて自然に帰ったトキを見守る日本人の誰もが、“親心”を胸にこの日を待ちかねていたはずである◆新潟県佐渡市で放鳥したトキに、ひなが生まれた。自然界での孵化(ふか)は国内では36年ぶりという◆放鳥のトキが可愛いわが子ならば、「可愛い初孫」を慈しむような目でひなの写真に見入った方もあろう。自然界には天敵のカラスやテンもいて、子育てはまだまだ気が抜けないという◆歌人の(みや)(しゅう)()さんに長歌『朱鷺(とき)幻想』がある。〈絶えゆかむ命をつなぎ、種の持続、(わず)かに残す、Nipponia nippon、幻の鳥その悲しみのごと…〉。心配するだけで何も手伝ってやれない。幻の、という形容が過去のものになる日まで、せめてわが子、わが孫の、旅の前途に天の恵みあれ。

2012年4月24日01時26分  読売新聞)

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