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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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日本が「最後の5羽」で人工繁殖に賭けたのは1981年だった。同じ年、絶滅と思われていた中国で「最後の7羽」が見つかる。そこから日中で始まるトキ再生の物語。雨後の草むらに火をつけるような苦闘の先に、小さな炎が揺れ始めた▼新潟県佐渡市で放鳥されたトキから、初のヒナがかえった。環境省の無人カメラがとらえた子は、餌をねだって親のくちばしをまさぐる。日本の自然界で孵化(ふか)が確認されたのは36年ぶりだ▼親鳥が保温や餌やりに励み、テンやカラスが襲わなければ、5月下旬にも巣立ちが見込まれるという。人が関わらない「野生のリレー」を目ざすからには手助けはできない。なんだか胸が詰まる▼日本のトキは、乱獲や戦後の乱開発で03年に絶滅した。中国から届いた個体による人工繁殖は成功し、4年前に佐渡で始まった放鳥は5回、78羽を数える。半数以上が生き抜き、抱卵中のつがいも多いそうだ▼あらゆる生物には、したたかに種(しゅ)をつなぐ知恵が備わる。ある種が短期間に死に絶えるのは、だから自然なことではない。この地球で「不自然な力」を振り回している種は、一つしかない。〈絶滅種数え尽くして青い空〉小池正博▼日々100種ほどが地球から消えているという。多くは、トキのように美しくも、パンダのように愛敬者でもない。彼らへの供養には足りないが、せめてこの空に、ニッポニア・ニッポンの学名を持つその鳥をお返ししたい。それが環境を、つまり人を守ることにもなる。