鉄道の障害者割引制度の改善を望む声が強い。各社で割引内容が違ったり距離制限があって使いにくいためだが、JRなどは後ろ向きだ。支え合いの時代にふさわしい制度の見直しを求めたい。
岐阜や三重県の障害者から総務省の中部管区行政評価局に、こんな内容の要望が寄せられた。
「百キロを超えないと割引がなかったり、鉄道ごとに割引の中身が違ったりして困る。障害者が一人でも気軽に出かけられるような制度にしてほしい」
鉄道の障害者割引は戦後間もなくの国鉄運賃法、身体障害者福祉法などができたのに合わせて一九五〇年、国鉄で始まった。民営化されたJRは制度を続けたが▽重度障害者(第一種)は乗る距離に関係なく介護者も含めて二人で一人分の計算となる50%割引▽障害が軽い第二種の人が一人で乗るときは、片道百キロを超えないと割引しない−という中身は六十余年たっても変わっていない。百キロ超は当時の学割の基準を借用したようだが、現今果たして現実的か。
全国の私鉄なども割引を次第に導入した。このうち一人利用に限って見ると、大手はJRと同じように片道百キロ超だけ割り引く(中部圏では名鉄や近鉄など。首都圏では東武、京王など)例が多い。石川県の北陸鉄道や静岡県の遠州鉄道などでは「制限はなく一律半額」だ。制度自体がないところもある。
自治体の交通機関でも違いがある。名古屋市営地下鉄は一律半額が原則。東京都営地下鉄は、知的障害者なら都が発行した療育手帳で半額になるが、他県の手帳では割引にならない。
これだけ違いがあると利用者が戸惑うのも無理はない。ところが「福祉政策として国が負担するべきだ」「減収になり一般料金に転嫁することになる」など、制度改正には消極的な社が多い。
だが障害者が身近な社会参加を望むノーマライゼーションの考えが進む今、百キロという長距離設定でいいのだろうか。各社ばらばらなのも不便である。
日本身体障害者団体連合会など各団体からは配慮を望む要請が以前から出されている。国土交通省も、内容を鉄道会社に伝えて協力を促すよう地方運輸局に毎年通知しているが、改善へ向かう気配はない。
しかし、利用者、鉄道各社、行政などが一堂に会し、より使いやすくするために知恵を出し合う時なのではないか。せっかくの制度はすでにあるのだから。
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