HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 36848 Content-Type: text/html ETag: "651cd-2712-dba7b800" Cache-Control: max-age=5 Expires: Sun, 22 Apr 2012 22:21:15 GMT Date: Sun, 22 Apr 2012 22:21:10 GMT Connection: close
朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
|
冬のライチョウを探して北アルプスの立山を歩いたことがある。25年ほど前、ようやく見つけた姿は神々しいばかりに白かった。国の特別天然記念物にして「氷河時代の生き残り」と言われるだけのことはあると、感じ入ったものだ▼その立山連峰の一帯に、日本にはないとされてきた氷河が存在することが先ごろ確認された。地球の温暖化が言われ、極地やヒマラヤでも氷が解けると危ぶまれるご時世だが、どっこい生きていた。ライチョウは喜んでいよう。ともに日本の山岳の、貴重な自然の記念物である▼氷河が見つかった三つの谷は冬の積雪が20メートルを超えるという。日本の山は緯度も標高も高くはない。氷河が存在するには厳しいが、世界有数の降雪量が不利を補い、夏の暑さに負けずにいたらしい▼地球は古来、寒くなったり暖かくなったりを繰り返してきた。専門家によれば、現在の私たちは、1万年ほど前に始まった気候の穏やかな間氷期に生きている。だが、こうした時期は実は短いのだという▼氷期(氷河期)の方がずっと長く、間氷期は「梅雨の晴れ間」のようなものらしい。前の氷期には氷河がカナダや北欧を覆い、海面は今より100メートル以上低かったとされる。変動絶えない地球史の、たまさかの「晴れ間」に文明は発達したことになる▼氷河のほとりに高山植物が咲く光景は山好きの憧れだ。奇跡のように存在する氷河が、地球環境への関心を様々に呼び覚ませばいいと思う。消尽の時代への反省も忘れずに。