全国に百カ所近くできた空港の多くが赤字にあえいでいる。政府は、国や自治体が管理する空港の運営権を民間に売却する改革を決めた。しかし、資産も含めて売却する民営化が必要ではないか。
狭い国土に実に九十八もの空港が乱立している。大別すると、株式会社が管理する成田、中部、関西の三空港、国が管理する羽田、新千歳など二十八空港、地方自治体が管理する静岡、神戸など六十七空港である。国土交通省の試算では、国管理のうち二〇〇九年度に経常黒字だったのはわずかに五空港という。自治体管理の空港も多くが実質赤字といわれる。
国の空港整備は、当初は需要の多い地域が中心だった。しかし、一九八〇年代になると地域活性化の要望を受ける形で「一県一空港」とばかり建設が相次いだ。甘い需要予測のまま、この三十五年間に二十九空港が誕生した。
空港の乱造を支えたのは、年間約五千億円が自動的に集まる空港整備特別会計(現・空港整備勘定)のおかげだ。主な財源は、航空会社から入る空港着陸料や航空機燃料税、空港の施設利用料だ。
これらは航空運賃に転嫁されるため、結局は利用客が全国の空港整備費を負担したことになる。しかも空港ができれば、職員や関連団体などに官僚の働き口、天下り先が確保される仕組みだ。空港乱立を加速させたのが、こうした利権構造というのは否定できまい。
乱立のツケが噴出するのは当然だ。需要予測を大きく下回り、航空会社の撤退が続く。理由は景気低迷や人口減少だけではない。経営感覚が乏しく、役人的発想の運営だからだ。
政府は抜本対策として、可能な限り多くの空港を対象に運営権を民間に委ねる民活法案を今国会に提出した。しかし、運営権だけでは中途半端だ。英国はサッチャー首相時代に十六空港を株式会社化、さらに空港庁も民営化して空港改革を成功させた。
親方日の丸と違って、民間のコスト意識や採算を見る目は厳しい。運営権だけでは経営の自由度が限定されてしまい、民間ならではの創意や資金を生かしきれない。早くも、運営権が売れるのは国管理空港のうち一ケタにとどまるとの観測もある。
空港経営は大競争時代だ。新幹線やクルマとの競合もある。官僚が権益を維持したいがための「小手先の改革」では、成功はとても望めない。
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