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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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明治最後の年に生まれた映画監督の新藤兼人さんは、95歳の時にこう書いている。「百歳まではとても無理だと思うが、わたしは今、生きている。この一秒を、この十分を、この一日を生々しく生きてる」。それから5年がたって、ご本人の見通しはうれしくも外れた▼現役の輝きを保ちつつ、きょう100歳の誕生日である。去年公開された49作目の「一枚のハガキ」は、自らの兵役体験をもとに作った。好評を博し、映画誌「キネマ旬報」による昨年の日本映画の1位に選ばれた▼「かけがえのない人を十把一絡(じっぱひとから)げで殺すのが戦争」という名匠の言葉には、激動を生き抜いた重みがずしりと乗る。この一秒、この一日を積み重ねて至った大台の齢(よわい)である▼そんな大長老、新藤さんにも先輩はいる。厚労省によれば、全国の100歳以上は昨年で4万7千人を超えている。超高齢のイメージを覆す活躍も多彩に聞こえてくる▼医師の日野原重明さん、ベストセラー詩人の柴田トヨさん……。有名人だけではない。頂戴(ちょうだい)した公募の歌集「老いて歌おう第10集」を開いたらこんな歌があった。〈百とせをすごせし梅の切り株に朱き茸(たけ)生ゆ二つ三つ四つ〉。106歳の福島ミヤさんの作だ▼〈人間といううれしいものに生まれ来て百四歳の今日も歌詠む〉は池田ハルヱさん。みずみずしさにこちらの心も潤ってくる。きれいごとばかりの老いではないだろう。だが「うれしいもの」に生まれた喜びを、老若が分かち合える、この国でありたい。