東京二十三区内の七割が震度6強以上に見舞われ、九千六百人の死者が出る−。東京都防災会議が描いた首都直下地震の想定は、極めて深刻だ。政治や経済の中枢でもあるだけに備えを急ぎたい。
湾岸沿いの一部では震度7になる。都心部を取り巻く、JR山手線から環七通りにかけての住宅地で、ドーナツ状に火の手が上がる。都防災会議地震部会は、東京湾北部を震源とするマグニチュード(M)7・3の地震が起きる場合などを考え、報告書をまとめた。
六年ぶりの見直しであり、従来予測よりも死者数は四千人も上回った。震度6強以上の地域は、約一・五倍にも広がった。「実際に起こりうる最大の被害像」としているものの、実際に巨大地震が襲えば、どんな大被害が起きるかは、まさに未知の領域といえる。
東日本大震災の教訓は、最悪の事態に対応する備えを十分に整えることではないだろうか。新想定に基づき、都は九月までに地域防災計画の修正案をつくるが、住民や企業それぞれも難を逃れる方策を日ごろから考えたい。
建物の倒壊や、木造住宅の密集地域では火災発生が相次ぐだろう。液状化や急傾斜地の崩壊なども起きる。地域によって、災害の形態は異なるから、まず自分の身の回りを再点検せねばなるまい。
どこに避難するか。食料など生活必需品の蓄えはあるか。地域との縁が薄い都会だけに、住民との連携をどう図るか。非常時を考えることからスタートしよう。
企業の場合でも同じだ。本社が集中する東京だけに、本社機能の一部を地方に移転する検討も必要だ。多くの重要データを二重に保存するバックアップ体制の充実は急を要する。
一極集中が加速した現代の東京は、世界で最も危険な“地震都市”になっている。建物の耐震化や都市の防火策もピッチをあげねばならない。生命や財産はむろん、政治や経済の中枢機能が壊滅状態にならぬよう、政府は早く総合対策をまとめるべきだ。
各地で大きな揺れが観測され、不安定な状況が続いている。首都直下地震は切迫性が高い。豆腐の上に列島が乗っているようなものだ。南海トラフ巨大地震が起きれば、名古屋や大阪も、大きな惨事を招くだろう。
大津波により、大阪が“水没”するとの説も出た。自治体ごとに大都市型の最悪シナリオを描き直すことは喫緊課題である。
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