ランキングが好きな日本人にとっては、少々ショッキングな報道だったかもしれない▼最近、経団連の研究機関・21世紀政策研究所が発表した長期予測である。何でも、日本は国民の「豊かさ」を示す一人当たりGDPで、二〇一〇年現在、世界二十位。それが三〇年には二十一位に後退、一〇年の二十四位から十五位に浮上する韓国に抜かれるのだという▼生産性の伸びなど種々の条件に基づいた予測だそうだが、より楽観的なシナリオでも、十七位の日本は十五位の韓国の後塵(こうじん)を拝するとの見立て。「先進国から転落しかねない」とまで脅されれば、ちょっと暗い気持ちにもなる▼ただ一方で思う。「先進国」であり続けさえすれば「豊か」なのか。最近、心を去らない歌がある。俳人の長谷川櫂(かい)さんが「3・11」後の作をまとめた『震災歌集』の中の一首だ。<つつましき文明国であるために必要なもの不必要なもの>▼「先進国」や「経済大国」の看板にしがみつかずとも、「つつましき文明国」であればよい。過剰な便利に取り巻かれた、いわば“量”の「豊かさ」から“質”のそれへの転換の中にこそ、日本の将来像は見いだされるべきだ。何が本当に<必要>で何が本当は<不必要>かを見極めるところから始まる▼震災と原発事故を経た今こそ、その転換の大チャンス。政治がそれをフイにせぬようにと願う。