HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 36967 Content-Type: text/html ETag: "134d06b-2724-5acacb00" Cache-Control: max-age=1 Expires: Fri, 20 Apr 2012 03:21:10 GMT Date: Fri, 20 Apr 2012 03:21:09 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

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2012年4月20日(金)付

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 このまま坂を転げ落ちるとは思わないが、峠を越えた寂しさはある。昨年10月1日現在の人口は1億2780万人、1年で約26万人減った。統計が整うここ60年間では、最大の減り幅だという▼少子化に加え、津波にのまれた命、帰国した外国人など、震災の爪あとが数で刻まれた。減少率の上位は、福島の1.9%を最高に、岩手、秋田、宮城と東北が占める。被災3県では、悲しい「自然減」に、まとまった転出が続いた▼警戒区域の福島県富岡町で、2千本の桜並木が満開になったと聞いた。名高い桜色のトンネルに、人影はない。原発の事故でわが家を追われた人々は、避難先のテレビで懐かしい景色を確認し、目を潤ませるばかりだ▼なお残る涙のあとを優しい色に染めて、桜前線がみちのく路を駆け上がる。きっちりと巡り来る四季に、人事にお構いなしの冷厳を思うのは筆者だけではなかろう。国破れて山河あり。その感慨を胸の奥にしまい込んだ。今こそ前を向く時だから▼きょうは、春雨が百穀を潤す、という穀雨(こくう)にあたる。草木は甘雨に煙り、稲作農家は苗づくりや田おこしに励む。この時節のお湿りは「万物生(ばんぶつしょう)」の異名の通り、生きとし生けるものに精気を満たしてくれる▼週末を挟んで、天気は総じて下り坂らしい。東日本では、花散らしの降りになるかもしれない。咲かせて、散らせて、春の色は北国へとにじむ。あまりに多くの人が欠けた、この列島をなでるように。恵みの雨に打たれて、また歩き出そう。

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