HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 36124 Content-Type: text/html ETag: "89ab4e-2722-fa1d9d00" Cache-Control: max-age=3 Expires: Mon, 16 Apr 2012 20:21:12 GMT Date: Mon, 16 Apr 2012 20:21:09 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

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2012年4月17日(火)付

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 涙というものは、流した人を強くも優しくもする。科学技術もまた、あまたの悲劇に鍛えられ、熟してきた。海の安全を考え直させたのは、100年前に大西洋で沈んだタイタニック号だ▼長さ270メートルの豪華客船は「不沈」とうたわれた。船底は二重、下部は16の区画に分割され、設計上は2区画に浸水しても沈まない。だが、すれ違いざまに水平に切られるような事故は想定外だった▼氷山に遭遇した巨船は左に舵(かじ)を切るが、はるかに大きい水面下の氷で右舷を90メートルにわたり損傷し、自慢の防水隔壁は4割が破られた。ただ上部客室での異音や衝撃は限られ、デッキで様子をうかがってカード遊びに戻るグループもあった▼2時間40分後、洋上のホテルは船首から氷海に没する。約2200人の乗客乗員に対し、「使うはずのない」救命ボートの収容力は半分、生存者は約700人だった。満天の星の下、無風の海は鏡の静けさながら、水温は0度を割っていたという▼いくつもの別れがあった。脱出時に優先された女性は、1等船室ではほぼ全員が助かったのに、3等では半数が逃げ遅れた。全員分のボートを備え、避難誘導は船室で差をつけないなど、惨事を教訓に海の常識となったルールは多い▼さて1世紀の後、福島の事故はどう語られていよう。原発を鍛え直した試練、それとも人類が原子力をあきらめる端緒か。いずれにせよ、ただの不運に終わらせてはならない。3800メートルの海底に眠る、タイタニックの伝言である。

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