HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 35998 Content-Type: text/html ETag: "a54cef-2714-7309100" Cache-Control: max-age=1 Expires: Mon, 16 Apr 2012 00:21:11 GMT Date: Mon, 16 Apr 2012 00:21:10 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

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2012年4月16日(月)付

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 東京あたりでもひと冬に何日か、カーテンを開けたら銀世界という朝がある。〈不意打ちの雪の朝(あした)でありにけり〉中村宏。音もなく降り積もる雪は、手品のような天の早業だ▼誰の知恵なのか、論告で「雪の朝」を持ち出した検察は大胆だった。さいたま地裁で死刑判決が出た連続不審死事件である。ずばりの証拠を欠き、被告も殺害を否認する難件。粗い例え話に背中を押された裁判員もいただろう▼大意はこうだ。「前夜は星空だったのに、朝は一面の雪化粧。雪が降る場面を見ていなくても、夜中に降ったのは明らかです」。間接証拠だけで罪に問えるという主張は、裁判員を鼓舞するかに聞こえた▼3人が死の直前に会ったのは、いずれも木嶋佳苗被告だった。死者からの大金、練炭、睡眠薬。社会常識を頼りに、裁判員が状況証拠のジグソーパズルを組んで浮かんだ「黒い雪景色」。「虚飾に満ちた生活のために殺人を重ねた」との結論である▼男性観や金銭感覚を「反省」し、生き直したいと訴える女性を断罪するには、相当の覚悟と得心が要る。裁判員の一人は、心の重さより事実の大きさが勝(まさ)ったと語った。100日もの任期を、全員で全うした自信もあろう▼裁判員制度の「耐久力」も試された。もっとも、「降る雪」を語る直接証拠が一つでもあったら、市民にこれほどの負担はかけずにすんだ。法廷らしからぬ文学的な例え話も、判決が言う被告の「不合理な弁解」も不要だった。ずさんな初動捜査が悔やまれる。

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