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朝日新聞社説をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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民間の会社員が入る厚生年金と、公務員らの共済年金を一元化する法案が、国会に提出された。2015年10月に、厚生年金に一本化する。年金の「官民格差」を解消して、制度への信[記事全文]
軍による反体制派の市民への弾圧が激化しているシリアで、前国連事務総長のアナン氏の調停による停戦がなされ、久しぶりにいくらか平穏が生まれた。一部で衝突があり、軍の戦車はな[記事全文]
民間の会社員が入る厚生年金と、公務員らの共済年金を一元化する法案が、国会に提出された。2015年10月に、厚生年金に一本化する。
年金の「官民格差」を解消して、制度への信頼を高めるために、今国会で成立させなければならない。
同じ収入の会社員と公務員を比べると、現時点では公務員の方が保険料が低いのに、年金は多く受け取れる。法案では18年に保険料率をそろえ、同じ収入なら同じ年金にする。
共済の「遺族年金の転給」はなくす。例えば夫の遺族年金を受け取っていた妻が亡くなると父母らに年金の受給権が移る制度だ。厚生年金にはない。官民格差の象徴的な存在だった。
共済だけの上乗せ年金である「職域加算」も廃止する。「民間の企業年金に相当する3階部分」と位置づけられたり、守秘義務や兼業禁止など厳しい規律を課される身分上の制約の代償で、公務員制度の一環と説明されたりしてきた。
だが、職域加算は公的年金の保険料のなかで賄われている。あまりに不透明だった。
新しい公務員の上乗せ年金はこれから検討される。一元化後の厚生年金と明確に切り分け、民間の企業年金と比較しつつ、必要性や給付の水準を考えていくべきだ。
そもそも一元化の方針が閣議決定されたのは84年のこと。公務員側の抵抗で話が進まなかった。「公務員の年金は優遇されている」という不満は、社会の連帯感を損ない、年金制度への不信を招いてきた。
07年に自公政権が国会に法案を提出したが、民主党が自営業者の国民年金を含めた一元化を主張し、廃案に追い込んだ。
今回の法案は、07年の時とほぼ同じ内容である。自公も反対する理由はないはずだ。
もっとも、法案はいくつか議論のある点を抱える。
例えば、恩給制度の名残として公務員共済だけに投入されている税金(追加費用)だ。これを減らすため、恩給部分がある年金を最大1割削るが、削減額が妥当かどうか。
もう一つは、積立金の仕分けだ。公務員共済がもつ約45兆円の積立金のうち厚生年金に回すのは24兆円で、残りはすでに給付が確定している職域加算分に使う。これは公務員に有利な配分になっていないか。
どちらも意見は様々である。国会で徹底的に議論し、政治的に決着させてほしい。政局優先の先送りで、官民格差が温存されるのだけはごめんだ。
軍による反体制派の市民への弾圧が激化しているシリアで、前国連事務総長のアナン氏の調停による停戦がなされ、久しぶりにいくらか平穏が生まれた。
一部で衝突があり、軍の戦車はなお都市部に残っている。本当の停戦になるかどうか、危うい状況である。しかし、これが定着し、正常化に向けた動きの一歩になるよう期待したい。
シリア問題では、暴力停止を求める国連安全保障理事会の決議案が2月に、ロシアと中国の拒否権で否決された。今回はロシアと中国も停戦を支持し、アサド政権に働きかけたことが功を奏した。
アナン氏は国連とアラブ連盟の特使として「シリア人による政治改革」を中心に提案した。これまでアラブ連盟が求めたアサド大統領の辞任は入っておらず、抑えた内容だった。
アサド大統領はこの停戦合意を、政治改革や民主化に指導力を使える最後の機会と考え、シリアの再生に向けて真剣に取り組むべきだ。
軍の攻撃によって、これまで9千人以上の市民が死んだことは、重大である。
政権は市民デモの背後に「テロリスト」がいるといって、武力行使を正当化してきた。だが住宅地を無差別に砲撃するようなことは決して許されない。
軍から離反した軍人が反体制の自由シリア軍を組織したことも、政権側の市民への対応の誤りとひどさに原因がある。
今後の事態収拾は、政府の治安対策の論理ではなく、反体制勢力との話し合いで進めなければならない。政治日程の進め方も同じだ。
アサド大統領は今年5月の議会選挙を掲げているが、政府による一方的な選挙は、民主化を求める市民の反発を招き、国を分裂させる。
性急な選挙よりも、国内の市民の政治的自由を保障することが先決である。
アナン調停の柱である国内で市民が平和的なデモをしたり、集会をしたりする自由が認められなければならない。そのうえで、反体制派と合意のもとで、選挙をすることが必要だ。
停戦を定着させ、発展させるためには、国連による停戦監視や平和維持活動が必要になる。
国連安保理はロシア、中国を含む常任理事国5カ国を中核として足並みをそろえて、市民が参加できる政治への移行を求めなければならない。
日本は長い間シリアに対する主要な経済支援国だった。アサド政権が民主化に向けて動くよう働きかけるべきである。