HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 14 Apr 2012 00:21:45 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:木嶋被告死刑 裁判員の苦渋の選択:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

木嶋被告死刑 裁判員の苦渋の選択

 首都圏の連続不審死事件で木嶋佳苗被告に死刑判決が出た。直接証拠がなく、間接証拠でどう判断するかが焦点だった。過去最長の百日間も裁判員を務めた市民が直面した苦渋の選択といえよう。

 木嶋被告が三人の男性を殺害したという直接証拠は存在しない。目撃証言も自白もない。むしろ木嶋被告は一貫して「無実だ」と訴えていた。「別れ話が原因の自殺と事故死だ」とも主張した。

 ただし、三人の死亡状況には共通するポイントがいくつもあった。遺体発見現場で練炭と練炭こんろがあったこと。司法解剖されなかった一人を除き、二人とも遺体から大量の睡眠薬が検出されていたこと。被告は三人と死亡直前まで会っていたことなどだ。

 そもそも木嶋被告は三人と結婚サイトで知り合い、多額の金などを受け取っていた。これらの事柄はたしかに木嶋被告と死亡した男性と密接に絡み合っているが、果たして木嶋被告が三人を殺害したかどうかの核心部分とどう結び付くのか。裁判員らは百日間、難問に苦闘したに違いない。

 死刑判決に至ったのは、死亡状況をそれぞれ詳細に検討し、まず三人とも「自殺の動機がなかった」「何者かに殺害された」ことなどを確認した。練炭などを入手していたのは、木嶋被告であり、「犯人は被告だ」との結論に達したのである。

 裁判長は殺害動機について「結婚するように装い、受け取った金の返済を免れるため」などと述べた。過去の事件でも状況証拠の積み重ねで有罪となった例はあり、今回も社会常識に照らして、被告が犯人であることに合理的な疑いを差し挟む余地がないと判断したわけだ。

 もっとも、この事件では問題点も露呈している。直接証拠がないということは、三件の殺人事件で初動捜査が不十分だったことを如実に示していよう。三都県の警察にまたがる事件で、一件は自殺と判断して遺体を司法解剖しなかった。もう一件も当初は事故死とみて、肝心の練炭など一部証拠物を押収していなかった。

 初期段階で捜査を尽くせば、もっと証拠は収集できたはずだ。科学的な捜査が重視される時代にあっては、証拠物が極めて重大な意味を持つ。犯人かどうかを見極める決定打となるケースもある。

 百日間もの大きな負担を裁判員に背負わせぬためにも、捜査の根本を再点検してほしい。

 

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