HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 13 Apr 2012 21:21:09 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:「仮の町」構想 国策の犠牲者に報いよ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

「仮の町」構想 国策の犠牲者に報いよ

 原発事故で避難している福島県双葉郡の自治体で「仮の町」構想が浮上している。住民の生活拠点を別の自治体の中に設ける、苦渋の判断である。国策の犠牲者に国は報いる義務がある。

 検討しているのは、福島第一原発から二十キロ圏内で立ち入り禁止の警戒区域に全域が入る大熊町、双葉町、富岡町など。ほぼすべての住民は町外に避難している。国が進める区域再編で、大半は五年以上帰れない帰還困難区域となる見通しだ。

 住民の転居、分散は古里の解体につながりかねない。以前の共同体機能を維持することで、住民の愛着心と連帯感を保ちたい。仮の町の目的は、元の町の存続にほかならない。何より「町民あっての町」なのだ。

 大熊町は素案をまとめた。いわき市周辺に仮の町を想定し、二年後の二〇一四年から住宅、役場、学校、病院などの移転準備に取りかかり、一六〜二〇年に順次完了させる。中には、今の避難先や希望する場所での生活を選ぶ人もいるだろう。それぞれの意向に沿った支援は続けなければならない。

 仮の町が成り立つには、元の町にいつ戻れるかの見通しがなければならない。大熊町はあえて十年後の二二年から、と帰還の開始目標を定めた。町を取り戻そうという強い決意が込められている。重く受け止めたい。

 ただ帰還するためには、原発事故の収束と除染が何よりも大事だ。年間被ばく量が五〇ミリシーベルトを超える帰還困難区域の除染効果は見込めるのか、そのための技術は開発されるのか、いつからどのように進むのか−。住民たちが知りたいことに、国は的確に答えなければならない。

 野田佳彦首相は就任以来、「福島の再生なくして日本の再生なし」と繰り返している。なのに国には、まるで切迫感がない。何としても住民帰還を成し遂げるという気持ちを前面に示してほしい。

 国は今になって、原発の隣接地域で長期にわたり帰還できない区域の設定を検討し始めた。中長期の見通しは早く、そして丁寧に示すべきだ。でなければ、復興への希望をつなぐ仮の町構想に水を差しかねない。

 仮の町を受け入れる自治体側の態勢整備も不可欠だ。移る住民たちの雇用も確保したい。元の町と仮の町の双方から、行政情報やサービスを受けられる仕組みも必要だ。国や県は責任をもって、構想を後押ししてもらいたい。

 

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