HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 36090 Content-Type: text/html ETag: "9fc9c1-276c-e499c440" Cache-Control: max-age=2 Expires: Sat, 14 Apr 2012 03:21:12 GMT Date: Sat, 14 Apr 2012 03:21:10 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

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2012年4月14日(土)付

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 季節の話題を書いて頂戴(ちょうだい)する便りに、日本列島の「長さ」を思うことがある。いつぞやも梅のことを書いたら、南国からは「とうに散った」、北国からは「雪中でまだ蕾(つぼみ)が堅い」といただいた。東京の季節感ばかり書いて、お叱りを受けることもある▼〈北国の弥生は四月〉というのが、越後育ちの詩人堀口大学の実感だったらしい。〈そして今/四月になって、梅桜桃李(ばいおうとうり)/あとさきのけじめもなしに/時を得て、咲きかおり……〉。最晩年に故郷をうたった詩句から、北国の遅い春の、あふれるような百花繚乱(ひゃっかりょうらん)が目に浮かぶ▼♯梅は咲いたか桜はまだかいな――の小唄は暖地の感覚だろう。梅から桃、そして桜の順に前線は旅立つが、手元の文献を見ると、北に行くほど時間差は縮まる。4月下旬に東北北部でほぼ並び、5月にかけて一斉に津軽海峡を渡っていく▼主役級の花に限らない。辛夷(こぶし)も木蓮(もくれん)も、菫(すみれ)ほどの小さき花も、この季節、さまざまな花前線がさざなみのように通り過ぎていく。昨日が100年の命日だった石川啄木の日記にこんな一節がある▼〈渋民村の皐月(さつき)は、一年中最も楽しい時である。天下の春を集めて、そしてそれを北方に送り出してやる時である〉。5月の描写だが、ふるさと岩手の遅い春の歓喜は、堀口の詩と通じあう▼石川啄木記念館に聞くと、いまも畑に少し雪が残り、桜は蕾が堅いそうだ。だが、冬ざれからようやくフキノトウが出てきたという。「天下の春を集める」まで、もういっときである。

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